【不動産】共有名義人の片方が死亡すると相続はどうなる?登記手続きについて解説
2024.12.15
夫婦や親子など、不動産が共有名義になっている場合、片方が死亡すると相続の手続きが必要になります。しかし相続は頻繁に起こるものではないので、相続権や手続きについて疑問に思う人も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、不動産の共有名義人が死亡すると共有持分は誰が相続するのか、相続手続きやトラブル回避方法を解説します。
目次
- 1 共有名義人の片方が死亡した場合、不動産は誰が相続する?
- 2 【原則】相続権は法定相続人に引き継がれる
- 3 【法定相続人がいない】特別縁故者が相続権を持つこともある
- 4 【特別縁故者がいない】場合は被相続人の共有持分は他の共有名義人に移る
- 5 共有名義人の片方が死亡したときの相続手続き
- 6 1. 遺言書の有無、内容を確認する
- 7 2. 相続人と相続財産を調査、確定する
- 8 3. 相続人全員で遺産分割協議を行う
- 9 4. 共有持分の相続登記を行う
- 10 5. 相続税の申告・納税を行う
- 11 共有名義の相続でトラブルを回避する3つの方法
- 12 1. 生前贈与をする
- 13 2. 遺言書を作成しておく
- 14 3. 自分の共有持分を売却する
- 15 共有名義の不動産の相続・売却はプロに相談を
共有名義人の片方が死亡した場合、不動産は誰が相続する?
共有名義とは、1つの不動産の所有権を複数人が持っている状態のことです。夫婦で不動産を購入、または親から相続することで共有名義になるケースが多く見られます。
共有名義人の片方が死亡したときに浮上しやすいのが、相続権の問題です。まずは、共有名義人の片方が死亡した場合の相続権について詳しく解説していきます。
【原則】相続権は法定相続人に引き継がれる
共有名義人の片方が死亡したときに相続が発生するのは、被相続人(死亡した人)の持分のみです。原則として相続権を持つのは法定相続人であり、他の共有名義人に持分が移るわけではありません。
<例:兄弟の共有名義で、兄が死亡した場合>
・弟の持分:そのまま
・兄の持分:法定相続人が引き継ぐ
なお、法定相続人の範囲と順位は民法で以下のように定められています。
・配偶者:常に相続人になる
・第一順位:子や孫などの直系卑属と、その代襲相続人
・第二順位:両親や祖父母などの直系尊属
・第三順位:兄弟姉妹と、その代襲相続人
【法定相続人がいない】特別縁故者が相続権を持つこともある
死亡した共有名義人に法定相続人がいない、もしくは全員が相続放棄をした場合は、特別縁故者(とくべつえんこしゃ)が財産を受け継げます。
特別縁故者とは、生前の被相続人と特別な関係にあった人のことで、条件は民法958条の2(※)に規定されています。
・被相続人と生計を同じくしていた者
・被相続人の療養看護に努めた者
・上記のほか被相続人と特別の縁故があった者
内縁の配偶者や事実上の養親子など、特別縁故者が財産を受け継ぐには、家庭裁判所への財産分与の申立て請求が必要です。そこで承認されると、相続財産の相続権を得られます。
※参照:e-GOV 法令検索「明治二十九年法律第八十九号 民法」
【特別縁故者がいない】場合は被相続人の共有持分は他の共有名義人に移る
法定相続人も特別縁故者もいない場合は、存命中の共有名義人に被相続人の持分が帰属するのが原則です(民法255条)。
多くの場合、共有名義の不動産は夫婦や兄弟、親戚間で所有しているため、共有名義人は血縁関係にあるでしょう。
相続人がいない場合、被相続人の共有持分は、特別縁故者への財産分与の対象となりますので、家庭裁判所へ「相続財産清算人の申立て」を行い、相続財産が残存することが確定したときにはじめて、他の共有者に帰属することになります。
共有名義人の片方が死亡したときの相続手続き
共有名義人の片方が死亡した場合は相続登記を行い、共有持分を相続人に移す必要があります。そこまでの手続きと流れを見ていきましょう。
1. 遺言書の有無、内容を確認する
相続手続きの進め方は、遺言書の有無と内容によって異なります。法定相続人同士での遺産分割協議よりも、遺言書がある場合はその内容が優先されるため、まずは遺言書の有無を確認しましょう。
<例>
・被相続人の自宅にないか
・親族か預かっていないか
・公証役場に保管されていないか
なお、遺言書には「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」の3種類があります。相続手続きに使用する際は、種類によって家庭裁判所での検認手続きの有無が異なる点に注意が必要です。
種類 | 検認手続きの必要性 |
---|---|
公正証書遺言 | なし |
自筆証書遺言 | あり(自宅保管だった場合) |
秘密証書遺言 | あり |
遺言書の種類や不動産の相続登記については、以下の記事で詳しく解説しています。
2. 相続人と相続財産を調査、確定する
遺言書がない場合は、法定相続人同士で遺産分割協議をしてから相続登記を行います。
そのため、まずは相続人の調査と確定作業が必要です。死亡した共有名義人の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて集め、前妻との子どもや知られていない親族などがいないか調べます。
なお、遺産分割協議は法定相続人全員の同意があって初めて成立します。誰か一人でも抜けていると無効になるので、最初の調査が重要です。
また、遺産分割協議では「誰が・どの財産を引き継ぐか」「引き継ぐ割合」などを話し合うため、相続財産の調査も必要です。不動産以外にも以下のような財産がないか確認しましょう。
・現金、預貯金
・株式、債券などの有価証券
・死亡退職金
・宝石
・書画骨董
これらプラスの財産よりも、多額の借金や未払金、買掛金といったマイナスの財産の方が多い場合は、相続放棄を検討することもあります。
3. 相続人全員で遺産分割協議を行う
法定相続人と相続財産の確定後は、相続人全員が集まって遺産分割協議を行います。不動産を含めた相続財産の分け方を話し合い、全員が内容に合意したら遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書は相続登記だけでなく、相続税の申告や名義変更など、さまざまな場面で必要になる書類です。紛失しないよう、大切に保管しましょう。
なお、遺産分割協議では相続財産を分け合う割合や、共有物の分割方法、意見の食い違いなどでトラブルが起こりやすいものです。相続人同士での話し合いが難しいと感じたら、弁護士に協議の仲介を依頼するのも一案です。
4. 共有持分の相続登記を行う
遺産分割協議が終わったら、法務局に登記申請書や必要書類を提出した上で相続登記を行います。手続きが完了すると、死亡した共有名義人の持分の名義が相続した人の名前に変わります。
これまで相続登記は任意でしたが、2024年4月1日から義務化されました。相続登記の申請は、相続の事実を知ってから3年以内にする必要があります。正当な理由なく期限内に手続きしなかった場合には10万円以下の過料が科せられるので、放置せずに必ず申請しましょう。
相続登記は個人でも可能ですが、専門的な知識が必要な場面もあります。手続きや書類の書き方などに不安がある場合は、司法書士に依頼すると確実です。
5. 相続税の申告・納税を行う
不動産や現金といった財産を相続した場合は、「被相続人の死亡を知った日の翌日から10カ月以内」に相続税の申告と納税をする必要があります。
なお、相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除があります。相続税が発生するのは相続したプラスの財産から、マイナスの財産や葬式費用などを引いた後の額が基礎控除額を超えた場合のみです。
相続税について、詳しくは以下の記事で解説しています。
共有名義の相続でトラブルを回避する3つの方法
単独名義と違い、共有名義の相続はトラブルに発展しやすい傾向にあります。不動産が共有名義になっている場合は生前に対策しておくことで、無用なトラブルを防げるでしょう。トラブル回避に役立つ主な対策を紹介します。
1. 生前贈与をする
自分の持分を他の共有名義人に生前贈与しておくと、相続に関するトラブルを回避しやすくなります。
例えば不動産が夫婦の共有名義になっている場合、そのままだと自分の持分が子どもにも相続されることになります。その点、配偶者に生前贈与しておけば、自分の死後に不動産の相続が発生することはありません。
また生前贈与の相手が配偶者であれば、配偶者控除を利用できる可能性があります。配偶者控除とは、最高2,000万円まで贈与税がかからない制度のことで、主に以下の条件を満たしている場合に利用できます。
・結婚して20年以上
・贈与される不動産が居住用、または居住用不動産の購入資金であること
生前贈与について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
2. 遺言書を作成しておく
遺言書を作成し、「自分の持分を誰に相続させるのか」を指定しておくと、親族間の争いを防げます。
例えば不動産が自分と長男の共有名義になっている場合、「自分の持分は長男に、預貯金は長女に相続させる」と指定しておけば、相続財産の分け方を巡る争いを回避できるでしょう。
ただし、遺言書を作成する際は遺留分に注意が必要です。遺留分とは、被相続人の兄弟姉妹を除く法定相続人に最低限保証された遺産取得分のことで、遺言書よりも優先されます。
遺言書の内容が遺留分を無視したものだと、遺留分を侵害された人が遺産を多く受け取った人に対して遺留分侵害額請求を行い、トラブルに発展する恐れがあります。相続が円滑に、そして穏便に進むためにも、遺言書の作成は司法書士や弁護士に依頼すると安心でしょう。
3. 自分の共有持分を売却する
自分の共有持分を片方の共有名義人か、専門の買取業者に売却する方法もあります。片方の共有名義人に売却すると、その不動産は単独名義になるので相続の対象外になります。
片方の共有名義人からの同意を得られれば、不動産をそのまま売却することも可能なので、不動産の相続についてどう考えているか、共有名義人同士でよく話し合ってみてはいかがでしょうか。
共有持分の不動産は売却できる?4つの方法と費用、トラブル例を解説
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共有名義の不動産の相続・売却はプロに相談を
共有名義人の片方が死亡した場合、相続権は原則として法定相続人に引き継がれます。また、遺言書の有無によっても相続登記の手続き内容は変わり、専門的な知識が求められる場面もあります。
共有名義になっている不動産の相続に困ったときは、弁護士や司法書士といったプロに依頼すると安心です。不動産の売却については、信頼できる不動産会社に相談しましょう。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。