マンションの相続税評価額とは何?計算方法や注意点についてもチェック
2024.12.02
親からマンションを相続すると、相続税が発生します。相続税がいくらかかるか知るためには、相続税評価額を用いた計算が必要です。
相続税評価額は土地と建物別に算出し、別々に評価を行います。また、令和6年から相続税評価額が改定されるため、内容を確認しておくことが大切です。
この記事では、マンションの相続評価額とは何か、基本的な考え方や計算方法、改定の内容や注意点を解説します。
目次
マンションの相続税評価額とは?基本的な考え方
相続税評価額とは、相続税を算出するときに必要なものです。
不動産を相続する際に、不動産の相続財産に対する課税価格を算出しますが、そのときに相続税評価額が計算されます。
マンションの相続税評価額は戸建ての場合と同様に、土地と建物を別々に計算します。また、建物の場合は居住か賃貸で評価が変わるのが特徴です。これらの内容について、詳しく見ていきましょう。
土地と建物は別々に計算
マンションの相続税評価額は、土地と建物を別々に計算します。建物の評価は固定資産税評価額を参考にし、その評価額がそのまま建物部分の評価額となります。
固定資産税評価額は、毎年4~5月に自治体から送られてくる「固定資産税の課税明細書」に記載されているので、いつでも確認できるよう保管しておきましょう。
一方、土地の評価は「路線価方式」と「倍率方式」の2種類があります。
路線価方式とは、路線価が定められている地域の評価方法を指し、倍率方式とは、路線価が定められていない地域の評価方法を指します。これらは路線価図や評価倍率表を活用して計算が可能です。(詳しい計算方法については後ほど解説します。)
建物の場合は居住か賃貸で評価が変わる
建物の評価は固定資産税評価額を参考にできますが、マンション一棟を相続した場合、居住しているか賃貸物件として貸し出しているかによって評価が変わります。
賃貸物件として活用している場合、相続税評価額は低くなるのが一般的です。賃貸物件の場合、借主が存在するため所有者の権利に制限がかかるなどが理由になります。(詳しい計算方法については後ほど解説します。)
マンションの相続税評価額の計算方法
ここからはマンションの相続税評価額の計算方法を確認していきましょう。建物の場合と土地の場合に分けて解説していきます。
建物の場合
建物の場合は、マンションの一室を相続する場合とマンション一棟を相続する場合で計算方法が変わります。また、居住するのか賃貸なのかによっても変わってきます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
まずは固定資産税評価額をチェック
前述しましたが「建物の評価=固定資産税評価額」になります。毎年市町村から郵送される「固定資産税の課税明細書」で固定資産税評価額を確認しましょう。
課税証明書を紛失してしまった場合には、市町村役場や都税事務所(東京23区の場合)で「固定資産評価証明書」を交付し、固定資産税評価額を確認できます。
マンションの一室を相続する場合
マンションの一室を相続する場合、建物の評価額は固定資産税評価額と同額になります。
マンションには所有する居住部分を指す「専有部分」と、廊下やエレベーター、階段、駐車場などを指す「共用部分」があります。
共有部分はマンションの一室を持つ区分所有者全員の財産です。専有部分の固定資産税評価額には、共有部分を住戸ごとに分けた価格も含まれているため、これ以外に加算されることはありません。
マンション一棟を相続する場合
マンション一棟を相続する場合、居住用なのか賃貸用なのかで変わります。先述したように、賃貸用の場合は借主がいることで自由に使うことができません。
建物部分は「賃家」、土地は「賃家建付地」として評価され、居住用に比べて相続税評価額は下がります。賃貸物件として活用している場合収益は得られますが、相続税評価額の計算には含めません。
マンション一棟を賃貸物件として活用している場合の相続税評価額の計算方法は、以下の通りです。
賃貸マンションの相続評価額=建物の相続税評価額+建付地の相続税評価額
建物の相続税評価額=固定資産税評価額×(1−借家権割合30%×賃貸割合)
建付地の相続税評価額=その土地の自用地としての価額×(1−借地権割合×借家権割合30%×賃貸割合)
借家権割合は、全国で一律30%と定められています。
土地の場合
続いてマンションの相続税評価額における土地部分の評価額を算出する方法です。マンションの土地部分の相続税評価額は、マンションの敷地全体の評価額を敷地権割合で分配した金額になります。
ここではマンションにおける、土地部分の相続税評価額の計算方法を確認していきましょう。
マンションの土地評価額を算出
マンションの敷地全体の土地評価額を算出するには、路線価方式と倍率方式の2つの方法があります。
路線価方式とは、路線価が定められている地域の評価方法のことです。倍率方式とは、路線価が定められていない地域の評価方法を指します。
基本的には、路線価方式で計算されることが多いです。路線価方式の場合、市街地の道路に面した宅地1㎡あたりの価格(千円単位)を示した路線価をもとに計算します。
路線価方式によるマンションの土地部分の相続税評価額は、以下の計算式で算出できます。
マンション全体の土地評価額=路線価×マンション敷地全体の面積(㎡)
例えば100㎡のマンションが路線価「400D」と示されている場所にある場合、「マンションの敷地1㎡=400千円(40万円)」と読み取れます。
「40万×マンションの敷地100㎡」でマンションの土地部分の相続税評価額はおよそ「4000万円」です。
一方、路線価が定められていない地域の場合、以下のように倍率方式を用いて計算します。
「土地の固定資産税評価額×一定の倍率」
土地の固定資産税評価額は、課税証明書あるいは市区町村の役所で固定資産税課題台帳を閲覧して確認できます。倍率の調べ方は、国税庁のホームページ上の倍率表で確認可能です。
敷地権を乗じて所有土地の評価額を算出
所有している土地分のみの評価額を算出するには、敷地権割合で分配する必要があります。
敷地権割合とは、マンション全体のうち区分所有者が所有している敷地に対する、権利割合のことです。
敷地権割合は、売買契約書や登記事項証明書に記載されています。「敷地権の割合」の欄に「〇分の〇」と記載されているのが敷地権割合です。
敷地権割合が確認できたら、マンション全体の土地評価額に敷地権割合を乗じて所有土地の相続税評価額を算出します。
計算式は以下の通りです。
所有土地部分の相続税評価額=マンションの敷地全体の評価額×敷地権割合
「補正率」や「地積規模の大きな宅地の評価」対象の場合
「補正率」は、土地が一般的な形状とは異なり利用しづらいと認められる際に適用されます。土地の評価には面積の大きさだけでなく土地の利用価値も含まれるからです。
路線価方式の計算で用いられる補正率は、土地の価値を適正に評価するための役割があります。また、利用価値の低い土地は固定資産税評価額も安くなるのが特徴です。
さらに「地積規模の大きな宅地の評価」の対象の土地であれば、特例で減価されます。「地積規模の大きな宅地」とは、三大都市圏では500㎡以上の地積の宅地、三大都市圏以外の地域では1000㎡以上の地積の宅地を指します。
対象になる土地の評価額は、路線価方式を用いて以下のような計算式で算出できます。
対象の土地の評価額=路線価×補正率×規模格差補正率×土地の面積(地積)
倍率方式で計算する地域の場合、倍率方式で出た評価額と、その土地が標準的な宅地であった場合の1㎡当たりの価額に補正率と規模格差補正率、地積を乗じて計算した額を比較し、どちらか低い価額によって評価します。
令和6年からマンションの相続税評価額が改定
令和6年からマンションの相続税評価額が改定されました。マンション1室の相続税評価額が時価の6割に引き上げられるという内容です。
その背景には、これまでマンション1室の相続税評価額は戸建てに比べて大幅に少ないことが問題視されていました。
敷地が広くても多数の居住者と按分するため、1室あたりの土地面積や建物部分の評価が低かったのです。特に高層マンションの場合、高層階ほど相続税評価額が低くなっていました。
そこで改定されたのが、マンション1室に対する相続税評価額が時価水準の6割に満たない場合でも以下の計算方法で評価額を調整するというルールです。
(相続税評価額×マンション1室の評価乖離率)×評価水準0.6
最低でも評価水準が時価の6割になるように調整することで、戸建てとの評価水準の差が少なくなります。この新ルールによって、最も影響を受けるのは高層マンションの高層階です。
高層階ほど建物部分の固定資産税評価額が時価を下回りやすいというのが理由です。
マンションの相続税評価額の注意点
賃貸マンションの場合は空室の割合を確認する必要があります。空室の割合は「賃貸割合」とも呼ばれ、以下の計算式で算出できます。
課税時期に賃貸されている専有部分の床面積の合計÷家屋の専有部分の床面積の合計
上記にあるように、賃貸されている部屋の戸数ではなく床面積で計算するのが特徴です。
賃貸マンションの相続税評価額は、以下のように建物の評価額と建付地(土地)の評価額で分けて計算します。賃貸割合を乗じるため、それによって評価額が増減します。
賃貸マンションの相続評価額=建物の相続税評価額+建付地の相続税評価額
建物の相続税評価額=固定資産税評価額×(1−借家権割合30%×賃貸割合)
建付地の相続税評価額=その土地の自用地としての価額×(1−借地権割合×借家権割合30%×賃貸割合)
マンションの相続税評価額を正確に知りたいなら専門家へ
マンションの相続税評価額は、相続税を算出するために必要な金額です。土地と建物を別々に計算し、マンションに居住するか賃貸物件として活用するかによっても相続税評価額は変わってきます。
今回紹介した計算方法は目安であり、正確な相続税評価額は専門家へ依頼するのがおすすめです。
マンションの相続税評価額の計算は難易度が高いので、スムーズに相続手続きを行うためにも、専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。