不動産が相続税対策に役立つ4つの理由。具体的な節税対策と注意点を解説
2024.12.02
相続税は資産が多いほど高くなりますが、土地や賃貸物件といった不動産を保有していれば節税が期待できます。「不動産は相続税対策に有効」と聞いたことはあっても、実際にどう活用すれば良いのか分からない人も多いはず。
そこで本記事では、不動産が相続税対策に役立つ理由を始め、具体的な節税方法と注意点を解説します。
目次
- 1 相続税対策に不動産が役立つ4つの理由
- 2 1. 相続税評価額を抑えられる
- 3 2. 賃貸用の不動産は相続税評価額が低くなる
- 4 3. 小規模宅地等の特例を活用できる
- 5 4. 借入をすることで相続税額を抑えられる
- 6 相続税対策に適した不動産の特徴
- 7 時価と相続税評価額に差がある不動産
- 8 流動性が高くニーズのある不動産
- 9 利回りが高い不動産
- 10 不動産を使った相続税対策4つ
- 11 1. 所有している土地に賃貸物件を建設する
- 12 2. 区分マンションを購入する
- 13 3. 不動産を売却して現金化する
- 14 4. 賃貸経営を法人化する
- 15 相続税対策は不動産の生前贈与という方法も
- 16 【子ども・孫に贈与】相続時精算課税
- 17 【配偶者に贈与】配偶者控除
- 18 不動産を活用した相続税対策の注意点
- 19 不動産の購入は本人の意思によって行う
- 20 明らかな相続税対策と判断されると無効になる
- 21 不動産の相続後、3年以内の売却は避ける
- 22 賃貸物件は収益性も考える
- 23 不動産を活用した相続税対策は住栄都市サービスにお任せ!
- 24 不動産は相続税対策に有効!悩んだらプロに相談しよう
相続税対策に不動産が役立つ4つの理由
不動産が相続税対策に役立つと言われているのは、相続税評価額を抑えられるからです。なぜなのか、4つの理由を解説していきます。
1. 相続税評価額を抑えられる
被相続人(亡くなった人)から相続したものが現金と不動産では、相続税評価額に違いが生じます。これは、現金の場合は相続した財産の額がそのまま相続税評価額に反映されるのに対し、不動産は時価の7~8割程度を目安に定められるためです。
例えば同じ1億円を相続した場合、不動産の方が約2,000~3,000万円も相続税評価額を抑えられます。
1億円の相続方法 | 相続税評価額 |
---|---|
現金で相続 | 額面通りの1億円 |
不動産で相続 | 約7,000~8,000万円 |
このように、現金で保有しているよりも不動産の方が相続税は少なく計算されるため、節税につながるというわけです。
なお、不動産の評価方法は土地と建物によって異なります。
<評価の基準になるもの>
・土地:相続税路線価または倍率方式(路線価のない土地について固定資産税評価額×倍率表による倍率)
・建物:固定資産税評価額
相続税の計算方法や、活用できる特例・控除については以下の記事で詳しく解説しています。
2. 賃貸用の不動産は相続税評価額が低くなる
自分たちが住む居住用の不動産よりも、人に貸し出す賃貸用の不動産の方が相続税評価額は減額されます。賃貸用の不動産は居住者がいる限り、物件の売却や他の活用などが難しいことが理由で、資産価値が低いとみなされるためです。
どのくらい相続税評価額が減額されるのか、時価6億円(土地3億円、建物3億円)のマンションを購入後、貸しに出していると仮定して計算していきましょう。
■土地
賃貸マンションやアパートといった賃貸物件が建ち、人に貸している状態の土地を「貸家建付地」と呼びます。相続税評価額を算出する計算式は次の通りです。
【自用地の相続税評価額-( 自用地の相続税評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)】
<各用語の説明>
・借地権割合:国税庁の路線価図で対象地にて確認可能
・借家権割合:全国一律で30%
・賃貸割合:入居者が入っている割合で、満室の場合は100%
<計算条件>
・自用地の相続税評価額:時価の70%と仮定
・借地権割合:70%と仮定
・借家権割合:30%
・賃貸割合:100%(満室)と仮定
この場合、計算式は「3億円×70%-(3億円×70%×70%×30%×100%)」となり、相続税評価額は1億6,590万円と算出できます。
なお、更地の計算式は「3億円×70%=2億1,000万円」です。比較すると、貸家建付地の方が4,410万円も相続税評価額を低減できることが分かります。
■建物
建物を賃貸住宅として活用している場合は、以下の計算式で相続税評価額を算出できます。
【固定資産税評価額-(固定資産税評価額 × 借家権割合 × 賃貸割合 )】
<計算条件>
・固定資産税評価額:時価の70%と仮定
・借地権割合:30%
・賃貸割合:100%(満室)と仮定
今回の条件に当てはめると、計算式は「3億円×70%-(3億円×70%×30%×100%)」で、相続税評価額は1億4,700万円です。
居住用の建物は「3億円×70%=2.1億円」なので、賃貸用の建物の方が6,300万円、相続税評価額を低減できます。
■全体の評価額
手前で計算した土地(1億6,590万円)と建物(1億4,700万円)の評価額を足すと、3億1,290万円になります。
3. 小規模宅地等の特例を活用できる
所有している土地が「被相続人の事業用宅地等(賃貸物件)」や「被相続人等の居住用宅地等(自宅)」に該当している場合は、小規模宅地等の特例を活用できます。
小規模宅地等の特例とは、国税庁が定めたすべての要件を満たしている場合に、土地の相続税評価額が最大80%減額される制度です。
区分 | 限度面積 | 減額される割合 |
---|---|---|
事業用宅地 | 200平方メートルまで | 50% |
居住用宅地 | 330平方メートルまで | 80% |
不動産はただでさえ現金よりも相続税評価額が低いところ、小規模宅地等の特例を適用できれば、さらなる節税が見込めます。
※参考:国税庁「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
4. 借入をすることで相続税額を抑えられる
不動産の購入時に銀行からの融資を利用すると、相続税評価額をさらに抑えられます。
相続税は、被相続人の財産すべてが課税対象になるわけではありません。現金や預貯金、不動産といったプラスの財産から、借金や売掛金などのマイナスの財産を差し引いた額が課税対象となります。
つまり不動産の購入時に借入すると、その分がマイナスの財産として控除されるため、相続税の課税対象となる遺産総額を減らせるというわけです。
ただし、住宅ローンの契約時に団体信用生命保険に加入していた場合は例外です。契約者が亡くなるとローンの残高が0円になるので、その場合の不動産はマイナスの財産としては扱われません。
相続税対策に適した不動産の特徴
一口に“不動産”と言っても、立地や流動性、利回りなどは物件によって異なります。相続税対策として不動産を購入する場合、どんな物件を選ぶべきか見ていきましょう。
時価と相続税評価額に差がある不動産
不動産を購入する場合は、時価と相続税評価額に価格差があるほど、相続税対策の効果は高くなります。
おすすめは立地の良い都市部の不動産です。時価が高いので、郊外の不動産よりも相続税評価額とのギャップが生まれやすく、より高い節税効果が見込めます。
相続税対策として不動産を購入する場合は、以下の条件をチェックしてみましょう。
<例>
・人口が多い地域にある
・駅から近くアクセスが良い
・土地の形状が良い
・接道条件が良い
流動性が高くニーズのある不動産
相続税対策として不動産を購入する場合は流動性、つまり「売却のしやすさ」も重要です。せっかく現金を不動産に換えたとしても、流動性の低い物件だと売却先が見つからない、もしくは売却価格が下がってしまい、相続税の納税後に換金がしにくい状況に陥る恐れがあります。
その点、流動性の高い不動産は購入時に金融機関の融資を受けやすい、購入希望者が集まりやすく売却しやすいといったメリットがあります。
また不動産を購入する場合は、相続した人が売却することも想定しておきましょう。売れやすい流動性の高い物件であることに加え、「買い手が購入しやすい価格帯かどうか」も重要なポイントです。
例えば20億円のビルを一棟買いしても、購入できる人は限定されてしまいます。同じ20億円を使うのであれば、5,000万円の物件を20戸、1億円のマンションを10戸のように分けた方が良い場合もあります。
利回りが高い不動産
投資額に対する収益割合を利回りと呼び、10%の場合は10年間で投資額が回収できることを示します。
不動産の所有中に発生する以下のような費用は、主に家賃収入から支払うことになるので、利回りの高さは非常に重要です。
<例>
・住宅ローンの返済
・物件の管理費
・固定資産税
・都市計画税
・保険料
・修繕積立金
家賃収入だけでは不足する場合は、現金の持ち出しが発生します。子や孫などへの相続前に預貯金額が減ってしまっては、相続税の節税どころではありません。
不動産投資の対象は高利回りのものが理想ですが、赤字経営を避けるためには最低でも6%以上は確保したいところです。
不動産を使った相続税対策4つ
適した相続税対策は不動産の所有状況によって異なります。今回は以下4パターンの相続税対策を紹介します。
・所有している不動産を活用する方法
・現金を不動産に換える方法
・不動産を現金化する方法
・賃貸経営を法人化する方法
1. 所有している土地に賃貸物件を建設する
更地を所有している場合は、アパートやマンションを建てた方が相続税を節税できます。
<理由>
・賃貸用の不動産は相続税評価額が低く設定されている
・建築時に借入金を利用した場合は控除の対象になる
・小規模宅地等の特例を活用できる可能性がある
賃貸物件を建設するメリット・デメリットは次の通りです。
メリット | デメリット |
---|---|
・相続税・固定資産税などの節税効果が高い ・長期的に収入を確保しやすい |
・初期費用が高額になりやすい ・空室のリスクがある ・定期的なメンテナンスが必要 |
これらのメリット・デメリットも比較した上で、無理のない計画を立てていきましょう。
2. 区分マンションを購入する
現金より不動産で所有した方が相続税を抑えられる仕組みを利用して、賃貸物件を購入するのも一案です。
購入するのは、アパート一棟よりも区分マンションの方がおすすめです。土地持分は区分マンションの方が少ないため、土地の相続税評価額を抑えられます。
3. 不動産を売却して現金化する
相続人が複数いる場合は、「誰がどの財産を相続するのか」「土地はどうやって分けるのか」といった相続問題が発生しがちです。
所有している不動産が複数あって相続人同士が分けやすい、もしくは収益化が望めるのであればそのままでも良いでしょう。
しかし、複数の相続人に対して不動産が1つだけ、または収益化が望めず、固定資産税だけがかかるだけの不動産の場合は、売却も検討しましょう。事前に売却しておけば、相続人同士が現金を分け合えるため、無用なトラブルを防ぎやすくなります。
なお、相続開始前に不動産を売却した場合は譲渡所得税が課税されます。売却後、手元にいくら残るか計算しておくことも大切です。
4. 賃貸経営を法人化する
個人で賃貸経営をしている場合は、法人化することで相続税の節税が期待できます。
相続の対象は「個人から個人」で、法人の財産を個人が相続することはできません。そのため、法人を設立して個人の財産を移しておくことで、自分の死後に賃貸物件が相続財産になるのを防げます。
法人化する際は建物部分を法人所有にした上で、財産を相続させたい人を役員にすることが重要です。そうすることで家賃収入を役員報酬として分配できるため、相続税や贈与税を軽減できます。
なお、この手法を選ぶ際は資本金額や株主・役員をどうするかの他、こまかなシミュレーションも必要になるので、税理士や司法書士に相談すると確実です。
相続税対策は不動産の生前贈与という方法も
不動産を生前贈与しておくと、相続の対象となる遺産総額を減らせます。具体的な方法を贈与する相手別に解説します。
【子ども・孫に贈与】相続時精算課税
相続時精算課税とは、生前贈与された財産に課される税金を、相続時に清算する制度です。
使用できる人は60歳以上の父母、または祖父母で、贈与する相手は18歳以上の子または孫です。条件を満たせば2,500万円までは贈与税が発生せず、超えた部分には20%の税率で課税されます。
相続時精算課税には贈与税を軽減できるメリットがある一方で、贈与した人の死後は生前贈与された財産も相続税の対象になるデメリットも存在します。制度を理解した上で、メリット・デメリットの両方を比較しておきましょう。
【配偶者に贈与】配偶者控除
婚姻期間が20年以上であれば、配偶者控除を利用できる可能性があります。配偶者控除とは、居住用不動産、または居住用不動産の購入資金の贈与が行われた際に、基礎控除110万円+最高2,000万円=2,110万円まで控除できる制度です。
相続税そのものの節税にはつながりませんが、贈与税が軽減される上に、配偶者に住まいを残せるメリットがあり、事実上基礎控除の範囲で相続税評価額に影響があります。
※参考:国税庁「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」
不動産を活用した相続税対策の注意点
相続税対策のために不動産を活用しても、場合によっては税務署から指摘が入り、節税できないこともあります。そうならないよう、注意点を事前に理解しておきましょう。
不動産の購入は本人の意思によって行う
不動産を活用した相続税対策は、「被相続人が自分の意思で購入した」と税務署に認められる必要があります。以下のような場合は否認される場合があるので注意が必要です。
<例>
・認知症や病気により、被相続人の意思決定がままならなかった
・被相続人以外が代理で契約していた
税務署から否認されると、相続税評価額ではなく時価での評価となるため、相続税対策にはなりません。
明らかな相続税対策と判断されると無効になる
不動産の購入が明らかに相続税対策だと税務署に判断された場合も、相続税対策は無効になります。明確な線引きはありませんが、引っかかりやすいのは次のようなケースです。
<例>
・90歳以上など高齢で購入していた
・相続税対策として物件を購入した証拠が残っていた
最終的な判断は税務署が行うので、怪しい行動は避けた方が無難です。
不動産の相続後、3年以内の売却は避ける
相続後、すぐに不動産を売却すると相続税対策とみなされる可能性があります。税務署による税務調査は、過去3年間を遡って行われます。
相続税対策として購入した不動産を子や孫などが相続する場合は、相続税の申告から3年以内の売却は避けるよう伝えておきましょう。
賃貸物件は収益性も考える
賃貸物件はランニングコストがかかるため、相続する場合は収益性の確保が重要です。収益性がない賃貸物件を相続すると赤字収支が続き、税務調査の対象となる3年間、不動産を所有し続けるのが難しくなるかもしれません。
節税のためとはいえ、焦って賃貸物件を購入するのは危険です。想定される利回りや収益、発生するランニングコストなどを専門家に相談した上で検討しましょう。
不動産を活用した相続税対策は住栄都市サービスにお任せ!
ここまで見てきたように、不動産は相続税対策に有効です。しかし、実際にどのような行動に移せば良いのか分からない人は多いはず。
<よくあるお悩み>
・不動産をそのまま相続した方が良いのか、売却した方が良いのか分からない
・現金を不動産に変えた方が良いのか悩む
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不動産は相続税対策に有効!悩んだらプロに相談しよう
不動産は相続税評価額を抑えられるため、節税対策が抜群です。今ある土地に賃貸物件を建てる、新たに区分マンションを購入する、所有している物件を売却するなど、状況に応じた選択肢があります。うまく活用することで相続税を抑えられ、子どもや孫といった相続人にかかる負担を軽減できるでしょう。
とはいえ、不動産関係は専門知識が必要な場面が多いもの。どう活用するべきか悩んだときは、不動産会社に相談すると安心です。今の状況に応じたベストな選択肢を提示してくれますよ。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。