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不動産の生前贈与で相続税が抑えられる?かかる税金や注意点もチェック

2024.12.15

不動産の生前贈与にはメリットがあります。「誰が不動産を引き継ぐか決められる」「相続税が抑えられる可能性がある」「計画的に財産継承ができる」の3つです。

しかし、生前贈与を行う際には贈与税や不動産取得税などの税金がかかるため、相続と比べてどちらが金額を抑えられるかを慎重に検討する必要があります。

そこで今回は、不動産の生前贈与のメリットやかかる税金、手続きの方法や注意点も解説します!

不動産の生前贈与のメリット3つ

生前贈与とは、生きている間に財産を引き継ぐことです。不動産の生前贈与のメリットは、以下の3つがあります。

1.誰が不動産を引き継ぐか決められる
2.相続税が抑えられる可能性がある
3.計画的に財産継承ができる

それぞれのメリットを詳しく見ていきましょう。

1.誰が不動産を引き継ぐか決められる

生前贈与することで、誰が不動産を引き継ぐのか決められ、確実に贈与できます。

遺言書がなく生前贈与もしていない場合、遺産分割協議をして相続する割合について話し合いが必要です。不動産は分けづらいためトラブルに発展する可能性があるでしょう。

生前贈与なら誰が引き継ぐか明確になるため、トラブルを防止できます。

メリット2.相続税を抑えられる可能性がある

生前贈与は相続税を抑えられる可能性があります。不動産の価格が今後値上がりしそうな場合は、生前贈与で価格が上がる前に引き継いだ方が良いでしょう。

なぜなら、生前贈与をすると不動産が相続財産から外れ、相続税を抑えられるからです。不動産の価格が値上がりする前に生前贈与し、贈与税を納める方が相続するよりも税金が低くなるケースもありえます。

また、家賃収入がある不動産の場合、家賃収入による財産が増えるため相続税が上がる可能性があるでしょう。

財産が増える前に生前贈与して、家賃収入は贈与を受けた人に渡すことで、相続税が抑えられるのです。

メリット3.計画的に財産継承ができる

生前贈与すると計画的に財産継承ができるのもメリットです。例えば、認知症などが理由で判断能力が低下した場合、遺言書の作成ができなくなる恐れがあります。

そのため不動産所有者が元気で、判断能力があるうちに生前贈与しておくと安心です。また、相続税対策で数年にわたり生前贈与を計画的に行う方法もあります。

不動産の生前贈与にかかる税金4つ

不動産を生前贈与する際には、以下4つの税金に加えて専門家への依頼費用がかかります。

1.贈与税
2.不動産取得税
3.登録免許税
4.印紙税

・専門家への依頼費用

それぞれの税金と費用について詳しく解説します。

1.贈与税

基礎控除の110万円を超えた分の金額に対して、贈与税がかかります。贈与税には一般税率と特例税率があり、兄弟間や夫婦間で贈与する場合は一般税率が適用されます。

一方、祖父母や父母から子や孫に譲る直系尊属への贈与は、特例税率を適用するのが一般的です。特例税率は一般税率に比べて税率が低い特徴があります。

基礎控除の110万円を超える場合は、贈与した翌年の2月1日から3月15日までに申告します。贈与税が発生した場合は、3月15日までに税務署に納めましょう。

2.不動産取得税

不動産取得税とは、不動産を取得した年にだけ発生する税金のことです。地方税のひとつで取得した土地と建物それぞれに課税されます。

土地と建物両方を生前贈与した場合、「土地・建物それぞれの課税評価額×3%」を納める必要があります。課税標準額とは「固定資産税評価額」のことです。

また、2024年3月31日までに取得した土地であれば「固定資産税評価額×1.5%」で算出できます。ただし建物に関しては「固定資産税評価額×3%」なので注意が必要です。

不動産取得税は、都税事務所や県税事務所等から納税通知書が届くので、忘れずに申告しましょう。

3.登録免許税

登録免許税は、不動産の所有権移転登記を申請する際にかかる税金です。贈与で取得した不動産の場合、名義変更をする際に登録免許税が発生します。登録免許税は、以下の計算式で算出します。

・固定資産税評価額×2%

4.印紙税

印紙税は契約書を作成するときにかかる税金です。印紙税の対象となる契約書に郵便局やコンビニで購入できる収入印紙を貼ることで、納税が認められます。

無償の贈与契約では一律200円の収入印紙が必要ですが、大きな負担はかかりません。しかし、負担付贈与の契約をした場合、取引額に応じて印紙税に差が生じます。

残りのローンがある状態で不動産を贈与した場合などがこれにあたります。負担付贈与は贈与を行う見返りが発生し、売買や交換と同様の扱いになるためです。

取引額に対する印紙税の金額は、以下の通りです。

取引額 印紙税
10万円以下 200円
10万円超え50万円以下 400円
50万円超え100万円以下 1000円
100万円超え500万円以下 2000円
500万円超え1000万円以下 1万円
10000万円超え5000万円以下 2万円
5000万円超え1億円以下 6万円
1億円超え5億円以下 10万円
5億円超え10億円以下 20万円

税金以外にも専門家への依頼費用も必要

不動産を生前贈与する際には、税金のほかに専門家へ依頼する費用も必要になります。

名義変更や贈与税の申告は、専門知識のある人に依頼するのが一般的です。

・名義変更:司法書士 1,000万円程の贈与で4~5万程度
・贈与税申告:税理士 1,000万円程の申告で5万程度

1,000万円程の贈与と申告の場合、司法書士と税理士への依頼費用は合わせて10万程度が目安です。

しかし、事務所やサポートの内容によって金額は異なるため、事前に確認しておくことをおすすめします。

不動産の贈与税を軽減する方法2つ

不動産の生前贈与は、場合によって贈与税の負担を軽くできます。不動産の贈与税を軽減する方法は以下の2つです。

1.配偶者贈与
2.相続時精算課税制度

それぞれの軽減方法について解説します。

1.配偶者控除

配偶者控除とは、婚姻期間が20年以上の夫婦間で不動産贈与する場合に対象となる、減税制度です。

居住用の不動産、あるいはその購入資金の贈与があった場合に、基礎控除110万円に加え、2,000万円まで贈与税が控除されます。

制度を利用する場合は、贈与を受けた年の翌年2月1日~3月6日までに贈与税の申告が必要です。

2.相続時精算課税制度

相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母または祖父母から18歳以上の子、あるいは孫に財産を贈与した場合、2,500万円まで贈与税が非課税になる制度です。

ただし相続の発生後、相続税を申告する際には生前贈与された分の相続税を払う必要があります。つまり、贈与された際には税金を払う必要がなく、相続時まで税金の支払いを先延ばしにできるというわけです。

贈与を受けた金額が2,500万円を超えた場合は、一律20%の贈与税が課税されます。また、2024年1月より新たな制度として、2,500万円の控除とは別に年間110万円の基礎控除が加わりました。

これは2,500万円の控除には含まれず、相続が発生した際に相続税として支払う必要はありません。

さらに、年間の贈与額が110万円以下なら贈与税の申告は不要になります。

相続時精算税制度と基礎控除は併用できないため、どの制度を利用すれば節税効果が得られるか検討しましょう。

不動産の生前贈与に必要な手続き

不動産の生前贈与する際には、贈与契約書の作成や名義変更の登記申請をする必要があります。

ここでは、不動産の生前贈与に必要な手続きをチェックしていきましょう。

贈与契約書を作成

贈与する相手と口頭でも贈与契約は成り立ちますが、贈与契約書を作成する必要があります。

なぜなら不動産の名義変更する際に「登記原因証明情報」が必要だからです。贈与契約書もこれに該当するため、作成しておくと良いでしょう。

また、贈与契約書には土地や建物の所在地など正確な情報を記載する必要があります。事前に法務局で「登記事項証明書」を取得しておきましょう。

名義変更の登記申請

贈与を明らかにするため、名義変更の登記申請が必要です。登記申請は贈与する不動産を管理する法務局で行います。登記申請には以下の書類が必要です。

・登記申請書
・登記原因証明情報(贈与契約書)
・登記識別情報または登記済証(権利書)
・贈与する土地の固定資産税評価証明書
・贈与者の印鑑証明書
・受贈者の住所証明情報
・司法書士など代理人に依頼する場合は委任状

登記申請は事案によっては難易度が高いため、一般的に専門知識のある司法書士に依頼します。司法書士への依頼は費用が発生するため、事前に確認しておきましょう。

不動産を生前贈与するときの注意点

不動産を生前贈与するときの注意点は、以下の2点です。

・相続開始前の3年以内の贈与は相続税に加算される
・生前贈与した不動産が特別受益とみなされる

それぞれの注意点について、確認していきましょう。

相続開始前の3年以内の贈与は相続税に加算される

贈与して3年以内に亡くなった場合は、相続税を逃れるために行った贈与とみなされます。

そのため、相続開始前3年以内に贈与した財産は相続財産に加算され、相続税を払わなければならないので注意しましょう。

生前贈与された不動産が特別受益とみなされる

生前贈与しされた不動産は特別受益とみなされ、相続の割合が減る可能性があります。

特別受益とは生前贈与によって得た利益のことです。遺産分割協議では生前贈与された遺産も持ち戻して、遺産の分け方を話し合います。

例えば、以下のように相続する遺産の累計が4,000万円で、遺産分割協議によって長男と次男が遺産を半分に分け合うと決めたケースを見ていきましょう。

長男が2,000万円の不動産を生前贈与されていた場合、特別受益とみなされ、相続時に次男が半分の2,000万円を受け取ることになります。

ただし、遺言書に持ち戻しをしなくて良いと意思表示が書かれている場合は、持ち戻さなくて良いとされています。

不動産の生前贈与と相続のどちらが良いか慎重に検討しよう

不動産の生前贈与は誰が財産を引き継ぐか明確にできたり、相続税が抑えられたり、計画的に財産を継承できたりするのがメリットです。

生前贈与する際は「贈与税・不動産取得税・登録免許税・印紙税」のほか、専門家への依頼費用がかかります。

配偶者控除や相続時精算課税制度の対象であれば贈与税を軽減できるので、確認してみると良いでしょう。

不動産を生前贈与する際の注意点も理解し、生前贈与と相続のどちらがお得か、慎重に検討してみてはいかがでしょうか。

監修

佐々木総合法律事務所/弁護士

佐々木 秀一

弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

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