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不動産の相続放棄はできる?手続き後の管理責任や注意点を解説

2024.12.02

家族が亡くなり相続が発生する際に、大部分を占めるのは土地や建物といった不動産です。相続して活用できるのであれば良いですが、不要な場合は扱いに困ってしまい、不動産の相続放棄を考える人も少なくありません。

本記事では不動産の相続放棄について、やり方や手続き後の管理責任、注意点に加えて、不動産の活用方法も解説します。

不動産の相続放棄はできる?

相続放棄とは、被相続人(亡くなった人)の持つ財産すべての相続権を放棄すること。家庭裁判所に申し立てを行い、受理されることで成立する制度です。不動産を相続することになった場合も相続放棄はできるのか、詳しく解説していきます。

不動産の相続放棄は可能

土地や戸建て、マンションといった不動産の法定相続人になった場合でも、相続放棄は可能です。相続放棄をすれば、最初から相続人ではなかったことになるので、不動産の固定資産税の支払いや、財産管理の義務から解放されます。

ただし、相続権が次の相続人に引き継がれるまでは、その不動産に関する管理責任が残る点には注意が必要です。

相続放棄の申し立ては3ヵ月以内

不動産の相続放棄は可能ですが、申し立てには「相続開始を知った日から3ヵ月以内」という期限があります。「相続開始を知った日」とは、つまり「自分が被相続人(親や親戚など)の死を知った日」ということです。

人の死後はお葬式や手続き関係に追われることが多く、あっという間に月日は過ぎていきます。原則として、3ヵ月を過ぎると相続放棄はできないので注意しましょう。

唯一、期限後に申し立てを行えるのは、借金の存在を後から知った場合など特別な事情のある場合のみです。このケースでは「借金を知った時点から3ヵ月以内」であれば、家庭裁判所に対して相続放棄の申し立てを行えます。

限定承認という方法もある

基本的に、相続放棄を選択するのはマイナスの財産が多い場合です。相続の段階でプラスの財産とマイナスの財産のどちらが多いか分からない場合は、相続放棄ではなく「限定承認」を選ぶ方法もあります。

限定承認とは、相続したプラスの財産の範囲内で、マイナスの財産も引き継ぐことです。マイナスの財産をプラスの財産が上回る場合は、すべての財産を受け継ぐことで手元に財産が残ります。

一方、プラスの財産をマイナスの財産が上回る場合は、両者を相殺することでプラスマイナスゼロになります。

このように限定承認にはメリットがありますが、共同相続人全員による申し立てが必要です。また手続きが煩雑なこともあり、実際に利用する人は少ない模様です。

相続放棄も限定承認もしないと「単純承認」とみなされ、プラスもマイナスもすべての財産を受け継ぐことになるので、どの選択肢が良いのか考えておきましょう。

相続放棄をした不動産はどうなる?

不動産の相続放棄をすると、自分は法定相続人ではなくなります。しかし、相続権は別の人に移るため配慮は必要です。自分が相続放棄をするとどうなるのか、他の相続人への影響や、全員が相続放棄をした場合について解説します。

相続権が同順位、または次順位の相続人に移る

相続放棄をすると、法定相続における同順位の人に相続権が移ります。同順位の法定相続人が誰もいない場合には、次順位の人が相続権を持つことになります。法定相続人の順位は次の通りです。

・配偶者:常に相続人になる
・第一順位:亡くなった人の子ども、子や孫などの直系卑属、その代襲相続人
・第二順位:父母や祖父母などの直系尊属
・第三順位:兄弟姉妹と、その代襲相続人

※参考:国税庁「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」

例えば親が亡くなり子どもが相続放棄をした場合、相続権は祖父母に移行します。そうなるとマイナスの財産まで祖父母に引き継がれるだけでなく、相続放棄の期限が迫っていると申し立てが間に合わなくなってしまう恐れがあります。

相続放棄を選択する場合は親族間でトラブルに発展しないよう、あらかじめ他の相続人に連絡し、事情を説明しておきましょう。

全員が相続放棄した場合は相続財産管理人の選任が必要

被相続人に多額の借金があり、プラスの財産をマイナスの財産が上回ることが明らかなケースでは、相続人全員が相続放棄をすることも。その場合、不動産は国に継承されますが、管理責任は相続放棄をした人に残ります。

このとき必要になるのが、相続財産管理人の選任の申し立てです。相続財産管理人とは相続人の代わりに財産管理を行う人のことで、一般的には弁護士や司法書士などの専門家が家庭裁判所によって選出されます。

不動産の相続放棄に関する3つの注意点

不動産の相続放棄を考えた際は、相続できる範囲と管理責任、費用の3点に注意が必要です。それぞれ詳しく解説していきます。

1. 土地だけの相続放棄はできない

相続の発生時は「すべての財産を相続する」、もしくは「すべての財産を放棄する」の2択です。相続対象の財産の中に不要、または価値のない土地が含まれている場合でも、土地だけを相続放棄することはできません。

土地だけを手放したい場合は、2023年4月から始まった「相続土地国庫帰属制度」を利用する方法があります。

「相続土地国庫帰属制度」は、相続又は遺贈(※)によって宅地や田畑、森林などの土地の所有権を相続した人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国に引き渡す(国庫に帰属させる)ことができる新しい制度です。

※引用元:政府広報オンライン 相続した土地を手放したいときの「相続土地国庫帰属制度」

相続土地国庫帰属制度の対象となる土地には、制度の開始前に相続した分も含まれます。

申請手続きは法定代理人を除いた第三者には依頼できず、相続人自身が行わなくてはいけません。書類作成は弁護士、司法書士、行政書士に依頼できるので、この制度を使う場合は専門家への依頼を検討してみてはいかがでしょうか。

2. 相続財産管理人が決まるまで管理責任は残る

冒頭で触れた通り、相続放棄後も次の相続人、または相続財産管理人が決まるまでは自身に管理責任が残ります。

建物の崩壊や土砂崩れなどによる被害が出た場合は、損害賠償を請求される可能性があります。事故や近隣トラブルなどが起きないよう、定期的な管理が必要です。

3. 相続財産管理人を選任する場合は費用がかかる

相続財産管理人として弁護士や司法書士などの専門家を選任する場合、10~100万円程度の予納金と、月額1~5万円の報酬が発生します。

これらの費用を相続財産で賄えない場合は、相続財産管理人の選任を申し立てた人がポケットマネーで支払う必要があります。

相続放棄の前に!不動産の活用方法

土地や建物といった不動産を相続した場合、売却や賃貸など、相続放棄以外の選択肢も考えられます。相続した不動産を有効活用できるよう、相続放棄以外の選択肢もチェックしておきましょう。

【土地】駐車場やトランクルーム経営をする

土地を相続した場合、駐車場やトランクルーム経営での収益化が期待できます。駐車場やトランクルームの建設費用は、マンションやアパートと比較すると安いので、初期費用を抑えたい人におすすめです。

駐車場は立地の良さも大事ですが、トランクルームは荷物を預けるための場所なので、立地条件が悪くても比較的経営しやすいでしょう。

【建物】賃貸に出す

戸建てやマンションを相続したものの、誰も住む予定がない場合は賃貸住宅として活用する方法があります。家の状態が良い、もしくは立地条件が良い場合は、そのままの状態で貸しに出せる可能性もあるでしょう。

劣化している、もしくは設備をグレードアップしたい場合は、リフォームやリノベーションをしてから賃貸に出す方法もあります。新築同様の見た目、かつ新たな設備にすることで借り手からの需要が増えれば、賃料を高めに設定できるかもしれません。

【土地・建物】売却する

土地や建物の活用が難しい場合は、売却するのも一案です。立地が良ければ予想より高値がつく場合もあります。不動産の所有に困り、活用や売却を考えている人は不動産会社に相談するのがおすすめです。

住栄都市サービスなら、不動産のプロと相続特化の提携士業(弁護士・税理士・行政書士)が無料で相談に乗ります。不動産をそのまま保有して収益化させた方が良いのか、相続放棄を選んだ方が良いのか、お客様にとってベストな選択肢を提示します。

不動産の相続に関してお悩みの人は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

不動産の相続や売却に関するお悩みは住栄都市サービスまで

不動産の相続放棄は慎重に!迷ったらプロに相談を

不動産の相続放棄は3ヵ月以内であれば可能です。しかし、すべての財産を引き継ぐ権利を失ってしまうので、状況に応じた判断が求められます。

場合によっては、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続する「限定承認」や、相続後に不動産を活用した方がプラスに働くこともあるでしょう。

そのあたりの判断は難しいので、相続に関して困ったら不動産屋へ相談を!専門家ならではの視点で、ベストなアドバイスをもらえます。不動産は先代から受け継ぐ大切な財産ですので、後悔のない選択をしてくださいね。

監修

佐々木総合法律事務所/弁護士

佐々木 秀一

弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

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