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不動産を孫に相続させることは可能?遺産を残す方法・注意点を解説

2024.12.15

不動産を所有していると、「かわいい孫に家を残してあげたい」と考えることもあるでしょう。しかし孫は祖父母の法定相続人ではないので、不動産を始めとする財産の相続権は持ちません。

とはいえ、生前に対策を講じておくことで孫への相続や、祖父母の家を孫に名義変更することは可能です。相続する具体的な方法や注意点を紹介します。

孫に不動産を相続させることはできる?

被相続人(亡くなった人)の相続財産は、民法によって定められている法定相続人同士で分け合います。孫が法定相続人であれば、不動産を始めとする財産を相続させることは可能です。

しかし、相続できるケースとできないケースがあるので注意が必要です。まずは、孫の相続権について解説していきます。

【注意】原則として孫は相続権を持たない

孫への不動産相続で避けられないのが相続権の問題です。相続権を持つ法定相続人の順位は民法で次のように定められていて、複数人いる場合は順位の高い順に相続します。

・配偶者:常に相続人になる
・第一順位:被相続人の子ども
・第二順位:被相続人の父母、祖父母などの直系尊属
・第三順位:被相続人の兄弟姉妹

孫は子どもよりも被相続人との関係が遠いので、原則として法定相続人にはなれません。つまり生前に何も対策をしなければ、不動産を始めとする遺産を孫に相続させることはできないのです。

代襲相続によって孫が相続人になるケースもある

例外として、被相続人の子どもが他界している場合のみ、孫が法定相続人になります。これを代襲相続(だいしゅうそうぞく)と呼び、法定相続人の第一順位に孫が繰り上がります。

なお、孫が複数人いる場合は全員が法定相続人となり、被相続人の子どもの相続分を分け合います。そのため、特定の孫だけに相続させることはできません。

孫に不動産を承継させるメリット・デメリット

孫への不動産承継を考えたときは、メリット・デメリットの両方を把握しておきましょう。

<メリット>
孫に不動産を承継させると、相続税の負担を抑えられる可能性があります。孫に相続させないと「自分→子ども」「子ども→孫」と相続の機会が2回あり、その度に相続税が発生します。

その点、孫に相続すると「自分→孫」の1回で済むため、相続税の支払い額を抑えられる可能性があるのです。

<デメリット>
詳しくは後述しますが、孫に相続すると相続税の金額が通常より2割加算される点には注意が必要です。

条件によっては孫に相続させるのではなく、通常通り「自分→子ども」「子ども→孫」と相続した方が相続税の負担を抑えられるケースもあります。どちらが良いか判断に迷った場合は、税理士に相談することをおすすめします。

孫に不動産を承継させる4つの方法

孫に不動産を承継させる方法は、遺言書、生前贈与、養子縁組、死因贈与の4つです。それぞれどんな方法か解説していきます。

孫に相続させる旨を遺言書に記す

法定相続人ではない孫に相続させたいときは、遺言書の作成が有効です。遺言書に「孫に不動産を相続させる」旨を記載すれば、遺贈(いぞう)として扱われます。

遺贈とは、遺言によって法定相続人ではない人に財産を受け継がせる制度です。孫だけでなく、血縁関係にない人に財産を残すこともできます。

ただし、遺言書の作成時は遺留分の侵害に注意が必要です。遺留分とは法定相続人が持つ最低限の相続財産についての権利のことで、民法によって定められています。自分の死後に親族間でトラブルが起きないよう、相続させる財産の配分には気を配りましょう。

孫に生前贈与をする

生前贈与とは、自分が生きているうちに財産を他者に受け継がせる制度です。この制度を使うと土地や建物といった不動産を孫名義にできますが、相続税の代わりに贈与税が発生します。

贈与税には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2種類があり、非課税額の上限が異なります。

種類 非課税額の上限
暦年課税 年間110万円まで
相続時精算課税 2,500万円まで

現金などと違い、不動産は小分けで贈与することはできないため、生前贈与する場合は相続時精算課税が適しているでしょう。相続時精算課税の対象者は次の通りです。

贈与者は贈与をした年の1月1日において60歳以上の父母または祖父母など、受贈者は贈与を受けた年の1月1日において18歳以上の者のうち、贈与者の直系卑属(子や孫など)である推定相続人または孫とされています。

※引用元:国税庁「No.4103 相続時精算課税の選択」

なお、2,500万円を超える部分については、一律で20%の贈与税がかかります。

孫と養子縁組をする

養子縁組によって孫を養子にすると、子どもと同じ第一順位の法定相続人にすることができます。それにより、代襲相続でなくても孫に不動産を相続させることが可能です。

また、養子縁組によって法定相続人が増えると相続税の基礎控除額が高くなるため、節税につながります。ただし、基礎控除を受けるために被相続人の養子にできる人数には制限があります。

・被相続人に実の子どもがいる場合:1人まで
・被相続人に実の子どもがいない場合:2人まで

※参照:国税庁「No.4170 相続人の中に養子がいるとき」

孫と死因贈与の契約を交わす

死因贈与とは、自分が亡くなったときに指定した財産を特定の人に受け継がせる契約です。遺言書による遺贈とは違い、契約を結ぶ際は相手との合意が必要です。18歳未満の孫とは親権者の同意があれば契約を結べます。

なお、死因贈与は財産を残す側と受け継ぐ側の両者が合意すれば口頭でも契約は成立します。ただ、トラブルを防ぐために書面で契約を交わした方が良いでしょう。

孫が不動産を承継する際にかかる3つの税金

祖父母から不動産を承継した孫には次の税金が発生します。

・相続税
・不動産取得税
・登録免許税

どんな税金なのか見ていきましょう。

1.相続税

相続税は被相続人の財産を相続、または遺贈によって取得した人に課せられる税金です。

<主な対象物>
・現金・預貯金
・土地・建物などの不動産
・株式・債券などの有価証券
・死亡退職金
・宝石
・書画骨董

なお、相続税は財産を受け継いだときに必ず発生するわけではありません。相続したプラスの財産から、マイナスの財産や葬式費用などを引いた後の額が、基礎控除額を超えた場合にのみ課せられます。

基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の計算式で算出可能です。相続税について、詳しくは以下の記事で解説しています。

不動産の相続税はいくら?計算方法と使える控除・特例について解説

2.不動産取得税

相続税と同じく、土地や建物といった不動産を取得した人に対して課せられる税金です。相続による取得は課税対象外ですが、遺贈や生前贈与、死因贈与の場合は課税対象です。

不動産取得税の税額は「課税標準額×税率」で計算されます。課税標準額は固定資産税評価額を基にしますが、税率は不動産の種類によって異なります。

<税率>
・土地、住宅:3.0%(2027年3月31日までの特例)
・住宅以外の家屋:4.0%

なお、生前贈与の相続時精算課税制度を利用した場合も、不動産取得税が発生する点には注意が必要です。

3.登録免許税

登録免許税は、不動産の名義変更をする際に発生する税金です。税額は不動産の固定資産評価額に基づいて計算されますが、税率は取得方法によって異なります。

<税率>
・相続による取得:0.4%
・遺贈や死因贈与などによる取得:2.0%

<例:不動産の固定資産税評価額が5,000万円の場合>
・相続による取得:20万円
・遺贈や死因贈与などによる取得:100万円

孫に不動産を承継させる際の注意点

孫に不動産を承継する際は、遺留分の侵害と相続税の2割加算に注意が必要です。具体的な注意点を解説します。

遺留分の侵害に注意する

遺言書による遺贈や養子縁組による相続、死因贈与は遺留分侵害額請求の対象になります。

例えば、「孫に全財産を相続させる」という内容の遺言書を作成した場合、それに納得できない他の法定相続人が遺留分侵害額請求を行う可能性があります。相続人間のトラブルを避けるため、孫への相続時は遺留分の侵害に注意が必要です。

孫の相続税は2割加算される

相続税は、被相続人と法定相続人の関係性によっては2割加算の対象になります。

相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与によって財産を取得した人が、被相続人の一親等の血族(代襲相続人となった孫(直系卑属)を含みます。)および配偶者以外の人である場合には、その人の相続税額にその相続税額の2割に相当する金額が加算されます。

※引用元:国税庁「No.4157 相続税額の2割加算」

代襲相続を除き孫が承継する場合も該当します。相続する財産の額が高いほど相続税の負担も大きくなるので、遺贈や養子縁組で孫に財産を渡すなら、2割加算についても意識した方が良いでしょう。

孫への不動産相続は可能!詳しくはプロに相談を

孫は祖父母の法定相続人ではありませんが、遺言書による遺贈や生前贈与、養子縁組、死因贈与を行うことで財産を受け継がせることは可能です。

しかし、相続や不動産に関しては専門的な知識が必要な場面が多いもの。相続に関しては税理士、不動産に関しては不動産会社に相談すると安心です。

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監修

佐々木総合法律事務所/弁護士

佐々木 秀一

弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

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