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借地権は相続できる!地主の許可が必要・不要な場合と名義変更の流れ

2025.02.17

借地権は財産として相続可能ですが、地主の許可が必要な場合と不要な場合があります。また、借地権が登記されている場合には、名義変更手続きが必要です。
本記事では、借地権相続の基本知識や手続きの流れ、注意点について詳しく解説します。スムーズな相続手続きに役立つ情報を押さえましょう。

財産として相続できる!借地権とは

本章では借地権の基礎知識を紹介します。借地権の意味や、所有権との違い、普通借地権と定期借地権の特徴を押さえ、借地権を相続した際に役立つ知識をつけましょう。

借地権とは

借地権とは、土地を地主から借り、地代を支払ってその土地に建物を建てる権利のことです。相続した家が借地の上に建っている場合、土地の借地権も相続の対象になります。この権利は「借地借家法」という法律で定められ、借りた土地の上に建物を所有するための安定した使用権として認められています。

所有権との違い

借地権と所有権の主な違いは、土地を「所有している」か「借りている」かです。

両者の違いをまとめた表を参考にしてください。

項目 所有権 借地権
土地の権利 完全に所有 他人の土地を借りる権利
相続 可能 可能
支払い 地代や更新料は不要
固定資産税や登記費用などは必要
地代、保証金、更新料などが必要
利用・売却 自由に利用・売却可能 借地契約に基づく制約あり
返却義務 なし 通常返却義務はない(契約による)

借地権の2つの種類

借地権は、普通借地権と定期借地権の大まかに2つに分けられます。それぞれの特徴は以下のとおりです。
【普通借地権】

  • ・契約更新が可能
  • ・存続期間は原則30年
  • ・契約により30年以上も設定可能
  • ・更新は最初が20年、以降は10年となり、正当な理由がない限り更新されていく
  • ・契約終了時には地主に建物を買い取ってもらう権利(建物買取請求権)が認められている

【定期借地権】

  • ・契約更新ができない
  • ・契約期間終了後は土地を地主に返却する必要がある
  • ・借主は建物買取請求権が認められず、立退料を要求できない

借地権の相続は基本的に地主の許可は不要

借地権は、相続時に特別な手続きや、地主の承諾は不要でそのまま引き継げます。借地借家法により保護され、契約期間中は継続が可能。名義変更や譲渡承諾料も、基本的には不要です。

ただし、相続後は地主や土地管理者への通知が望ましく、建物の所有権は相続人名義に変更する必要があります。

一方、地主から土地返却や承諾料、立ち退きを求められる場合もありますが、これらに法的根拠はなく応じる必要はありません。借地借家法の下で、借地権は保護され、建物に住む予定がなくても土地の利用を続けられます。

借地権の相続で地主の許可が必要なケースとは?

借地権は基本的に、相続時に地主の許可は不要ですが、特定のケースでは許可が必要です。ここでは、借地権の遺贈や売却、建て替えにおける制限条項など、許可が求められる具体的な場面を解説します。

1.法定相続人以外への借地権の遺贈

借地権を法定相続人以外の人へ遺贈する場合は、地主の許可と譲渡承諾料を求められることが一般的。譲渡承諾料は、借地権価格の10%程度が相場といわれています。個別の事情によって金額は異なるので、不安な場合は弁護士や不動産会社など専門家に相談しましょう。

合理的な理由がないにもかかわらず、地主から許可が得られない場合は、裁判所に借地非訟という申し立てを行うことで、承諾の代わりとなる許可が得られます。

2.法定相続人以外への借地権の売却

借地権を法定相続人以外に売却する場合も、遺贈と同様に地主の許可と譲渡承諾料が必要です。譲渡承諾料の相場は、借地権価格の10%程度といわれています。

なお、承諾を得ずに売却すると、契約違反となるため注意が必要です。地主からの契約解除を回避するためにも、地主の許可と承諾料は必須です。

3.制限条項がある建て替え

相続した借地権上の建物を建て替え・増築したい場合は、契約に建替え制限条項があるかを確認しましょう。制限付きだと、地主の許可を得ないと契約が解除される恐れがあります。承諾料は、借地権価格の3~5%程度が一般的です。

しかし、経年劣化によるひび割れなどの修繕は承諾不要。地主が誤解してトラブルにつながらないよう、事前に連絡しておくと安心です。

借地権が登記されている場合は名義変更が必要!手続きについて

稀ではありますが、借地権自体が登記されている場合があります。その場合、借地権上にある建物とあわせて、名義変更が必要です。

本章では、名義変更の流れ、必要書類、諸費用について解説します。

1.名義変更の流れ

  1. 1.土地の登記簿謄本の「乙区」を確認し、借地権の有無や、土地の登記の有無を確認
  2. 2.地主に相続発生を報告
  3. 3.相続人の決定
  4. 4.必要書類の準備
  5. 5.法務局への名義変更申請

相続人の決定は、遺言書または遺産分割協議によって行われます。手続きが不安な場合は司法書士などの専門家に相談しましょう。

2.必要書類

必要書類、取得場所は以下のとおりです。

必要書類 取得場所
登記申請書 法務局
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 市区町村役場
相続人全員の現在の戸籍謄本 市区町村役場
被相続人の住民票の除票もしくは戸籍の附票 市区町村役場
相続人の住民票もしくは戸籍の附票 市区町村役場
相続人全員の印鑑証明書 市区町村役場
固定資産税評価証明書 市区町村役場、市税事務所
遺言書(被相続人が作成していたら)
遺産分割協議書(相続人間で遺産分割協議が行われたら)

3.書類取得費や手続きにかかる費用

【必要書類取得費用】

書類名 手数料(1通あたり)
戸籍謄本 450円
除籍謄本・改製原戸籍 750円
住民票・戸籍の附票の写し 300円程度
(自治体により異なる)
印鑑証明書 200~300円程度
固定資産評価証明書 200~400円程度

【手続きにかかる費用】

名義変更の対象 登録免許税の計算方法
建物所有権 固定資産税評価額×0.4%
借地権 固定資産税評価額×0.2%

借地権相続の注意点2つ

借地権の相続では2つの点に注意が必要です。注意点を理解し、相続後や税金のトラブルを避けましょう。

1.兄弟で借地権を共有するとトラブルになる可能性がある

借地権を兄弟で共有すると、建物の使用方法や修繕費負担、売却方針などで意見が分かれ、トラブルになることがあります。

特に、売却や建て替えの際は全員の同意が必要で、意思決定が難航することも少なくありません。共有を避けるため、相続人の中で誰が引き継ぐかを話し合い、スムーズな相続を目指しましょう。万が一共有する場合は、事前に役割分担やルールを明確に決め、トラブルを未然に防ぐ工夫が必要です。

2.相続税がかかる

借地権は財産として評価されるため、相続時には相続税が課されます。

相続税評価額は、土地の評価額と借地権割合で算出されるため、事前に金額を把握しておくことが重要です。評価額が高い地域では、想定以上の税負担が発生することも。相続税は10ヵ月以内に現金で支払う必要があります。相続税を用意できない場合は、他の財産を売却する必要が生じることもあるため、早めに専門家へ相談して備えておきましょう。

借地権相続に関するよくある質問【4選】

ここでは借地権の相続でよくある質問を紹介します。不安な場合は専門家に相談しましょう。

1.借地権は相続放棄できる?

相続放棄は可能です。

「相続を知った日から3ヵ月以内」に家庭裁判所に「相続放棄申述書」を提出しましょう。相続放棄をすると、地代や固定資産税、相続税、解体費用の支払いが発生しないメリットがあります。

しかし、借地権だけといった相続放棄はできません。相続放棄すると、ほかの財産すべてを放棄することになるので注意が必要です。

2.借地権は中途解約できる?

原則、中途解約はできません。

もし解約したい場合は、契約期間満了時に、更新しない旨を地主に伝えましょう。しかし、借地権者と地主、両方の同意があれば中途解約は可能です。

<中途解約可能なケース>

借主の申し出 災害・老朽化により、建物が使用できなくなった場合
貸主の申し出 契約違反があった場合(無断増改築、地代滞納など)

解約を申し出る場合、契約書に中途解約条項がないと、解約承諾料が発生する可能性があるので注意しましょう。

3.借地に固定資産税はかかる?

借地権者に固定資産税・都市計画税の納税義務はありません。

しかし、地代を支払う必要があります。地代は通常、土地の固定資産税・都市計画税を基に決定されます。建物を所有している場合、建物に対しての固定資産税は支払わなければいけません。

4.借地上の建物は貸出していい?

地主の許可なく貸出可能です。

ただし、借地契約に第三者への賃貸に関する規定がある場合は、地主の許可が必要。もし拒否された場合、裁判所に借地条件の変更を求めることも可能ですが、費用と労力がかかります。規定がなくても、地主との良好な関係を保つため、事前に通知するのが理想です。

借地権相続のポイントを押さえ、スムーズに手続きを進めよう

相続時、借地権は基本的に地主の許可が不要ですが、遺贈や売却、建て替えなど特定のケースでは許可が必要です。名義変更の手続きや相続税、共有のリスクを事前に確認し、適切に対応することでトラブルを防げます。不安がある場合は専門家に相談し、スムーズな相続を目指しましょう。

土地の相続に関するお悩みは、住栄都市サービスまでぜひご相談ください。

監修

佐々木総合法律事務所/弁護士

佐々木 秀一

弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

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