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借地権は相続できる?借地権の種類や地主の許可、税金について解説

2024.11.27

借地権は相続でき、地主の許可(承諾)も必要ありません。相続を機会に売却や建て替えをする場合には地主の許可が必要となる場合がありますので注意が必要です。また、借地権の種類によって、相続税評価額も異なります。相続するにあたって注意点もいくつかあるため、事前に知っておくようにしましょう。ただし、手続きが複雑な場合は専門家に任せると安心です。

この記事では、借地権の種類や相続手続きの流れ、相続する際の注意点について解説していきます。

借地権とは

借地権とは、建物を所有するために他人の土地を借りる権利のことです。借地権があれば、土地を購入せずに家を建てられるメリットがあります。

借地権の種類

借地権は、借りた時期によって借地法(旧法)または借地借家法により権利義務が定められています。

(1)借地法(旧法)
借地法(旧法)は、1992年8月より前から土地を借りている場合に適用されます。契約期間は地主側に正当な理由がない場合は更新されることになっており、借地人の権利が強く、地主側が不利であることが特徴です。そのため、土地が返還されにくいデメリットがあります。

項目 年数
存続期間 木造:30年(最低20年)
鉄骨・鉄筋コンクリート:60年(最低30年)
更新期間 木造:20年
鉄骨・鉄筋コンクリート:30年

(2)借地借家法
借地借家法は、1992年8月1日から施行された法律です。同法が定める借地権には5つの種類があります。なかでも、1の普通借地権が一般的です。

種類 特徴 存続期間
1.普通借地権 契約期間は決まっているが、
更新により半永久的に借りられる
30年
2.定期借地権 更新はなく、契約終了後は
更地にして返還しなければならない
50年以上
3.事業用定期借地権 事業用で土地を借りる場合に適用され、
契約終了後は更地にして返還する
10年以上50年未満
4.建物譲渡特約付借地権 契約から土地所有者が建物を買い取る 30年以上
5.一時使用目的の借地権 一時的に土地を借りる 一時的

 

借地権は相続できる

借地権は相続できます。法定相続人が相続する場合、地主の許可は不要です。ただし、法定相続人以外へ遺贈する場合や建替え・増改築を要する場合及び借地権を売却する場合には、地主の許可(承諾)を得る必要があります。

地主の許可は不要な場合

借地権を法定相続人が相続する場合、地主の許可は不要です。また、賃貸借契約書の名義変更も必要ありません。地主に対しては相続したことを通知するだけでよく、承諾料も不要です。

地主の許可が必要な場合

地主の許可が必要なケースは3つで、どれも承諾料を地主に支払います。

1.法定相続人以外へ遺贈する場合
・承諾料は10%程度
・承諾されない場合は、家庭裁判所で借地権譲渡に代わる許可を求める申立てをする

2.建替えや増改築する場合
・承諾料は3〜5%程度
・建替えや増改築を制限される条項があれば、許可を取らなければならない
・許可が取れない場合、家庭裁判所へ許可を求める申立てをする

3.借地権を売却する場合
・承諾料は10%程度
・売却は可能だが、承諾が必須
・承諾なしに売却した場合は契約違反となり、契約を解除される恐れがある

なお、相続をきっかけに地主から地代を値上げされるケースがあります。法的に応じる義務はありませんが、不安な方は専門家への相談がおすすめです。ぜひ、住栄都市サービスにご相談ください。

借地権の相続手続きの流れ

借地権の相続手続きは、以下の流れで行います。

1.土地と建物の全部事項証明証を取得する
2.必要な書類を準備する
3.相続登記手続きをする

各手順の詳細を解説していきます。

1.土地と建物の全部事項証明証を取得する

まずは、法務省で全部事項証明書を取得し、登記事項の記載内容を確認します。土地の賃借権は全部事項証明書の乙区の権利部に記されているため、亡くなった被相続人の氏名が権利者として記載されているか見てみましょう。

記載がある場合は借地権が設定されているため、遺言書や遺産分割協議書に従って相続手続きが必要です。一方、記載がない場合は相続手続きをする必要はありません。ただし、建物の所有権移転の手続きは必要であるため、甲区の権利部で被相続人が所有者かどうか確認しておきましょう。

2.必要な書類を準備する

借地権の相続手続きに必要な書類と費用は以下のとおりです。

書類 費用
所有権移転登記申請書
遺言書または遺産分割協議書
被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本 1通450円
被相続人の住民票の除票または戸籍の附票 1通300円程度
相続人全員の現在の戸籍謄本 1通450円
相続人の住民票または戸籍の附票 1通300円程度
相続人全員の印鑑証明(遺産分割協議書を提出する場合) 1通300円程度
固定資産評価証明書 1枚200〜400円程度

 

3.相続登記手続きをする

前述した書類が整ったら、借地の所在地を管轄している法務局に提出し、相続登記手続きを行います。提出方法は窓口・郵送・オンラインの3通りです。郵送で提出した場合の相続登記の申請日は、法務局に書類が到着した日となります。

なお、オンラインの場合は申請に際して専用のシステムを導入する必要があるため、パソコンが得意でない方は窓口か郵送での提出がおすすめです。

借地権の相続税評価額の計算方法3つ

借地権の相続税評価額は、国税庁の評価額基準に従って計算します。なお、借地権の評価方法は3つあり、種類によって計算式が異なるため注意が必要です。

普通借地権

契約更新がある一般的な借地権を指す普通借地権は、以下の計算式によって評価します。

路線価または倍率方式による土地価格×借地権割合

借地権の対象となる土地が権利のない更地だった場合の土地価格に、借地権割合を掛けた値が、普通借地権の相続税評価額です。なお、借地権割合は地域ごとに定められており、路線価図や評価倍率表に表示されています。

財産評価基準書の路線価図・評価倍率表(国税庁)

一時使用目的の借地権

一時使用のための借地権は、雑種地の賃借権として以下の計算式より評価します。

(1)地上権に準ずる権利としての評価が認められる賃借権

雑種地の自用地評価額×法定地上権割合と借地権割合のどちらか低い割合

(2)上記以外の賃借権

雑種地の自用地としての価格×法定地上権割合×1/2

賃借権の登記がされている場合や権利金・一時金の支払いがある場合は(1)に該当します。なお、自用地とは他人の権利がない土地のこと。また、法定地上権割合とは、その賃借権が地上権である場合に適用される割合です。

定期借地権

更新のない定期借地権は、以下の計算式にて評価します。

路線価または倍率方式による土地価格×(A÷B)×(C÷D)

A:定期借地権の設定時における借地権者の経済的利益の総額
B:定期借地権の設定時におけるその宅地の通常の取引価額
C:課税時期におけるその定期借地権の残存期間年数に応じた基準年利率による複利年金現価率
D:定期借地権の設定期間年数に応じた基準年利率による複利年金現価率

定期借地権の評価は、原則、課税時期において借地人が所有する経済的利益とその存続期間をもとに行います。

借地権を相続する際の注意点

借地権を相続する際には単独名義にし、建物の紛失に伴う借地権の消滅や更新料についても理解が必要です。また、場合によっては地主から立ち退きを要求されることも。

トラブル回避のため、事前に専門家へ相談しておくと安心できます。

単独名義にする

借地権付建物を相続する場合は、単独名義にするとよいでしょう。例えば、3人兄弟のうち1人が売却せずに住み続けた場合、共有名義にすると固定資産税は3等分になり、住んでいない2人にとって不公平が生じます。

また、相続で共有者が増えていく恐れもあるため、単独での所有が安全です。

建物が滅失すると借地権も消滅する

建物の倒壊、火災、水害などで建物が滅失した場合は、借地権も消滅してしたいますので、このような場合、地主の承諾を得て建物を再築する必要があります。なお、再築を知らせてから2ヶ月以内に異議申し立てがない場合は承諾したとみなされます。

いずれにしても、再築が必要になった場合は専門家に相談すると安心です。

更新料がかかる場合がある

借地権の更新料は法律で定められていません。そのため、地主と借地権者の合意のもとで支払うかどうかが決定されます。

ただし、契約で決まっている場合には更新料を支払わなければなりません。

地主が土地を売却した場合は立ち退きを要求されることもある

地主が亡くなった場合、当然その土地は相続されます。相続人がそのまま保有者になれば問題ありませんが、土地を第三者に売却した場合は、新しい地主から立ち退きを要求されることも。

その際、以下の2つを満たしていない場合は、立ち退かなければなりません。

・借地上に建物が存在していること
・建物に借地人名義の登記がされていること

ただし、トラブルが起きないよう、借地権付建物を保有している場合は専門家に確認しておくのがおすすめです。

借地権の相続は住栄都市サービスに相談

借地権は相続できます。ただし、地主の許可を得なければならなかったり、立ち退きを要求されたりする可能性があるなどトラブルに発展しやすいのが実情です。

そこで、専門家のいる不動産会社に相談すると安心できます。

借地権の相続を検討している方はぜひ、住栄都市サービスまでお問い合わせください。

監修

佐々木総合法律事務所/弁護士

佐々木 秀一

弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

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