生前贈与した不動産は3000万控除を利用できる?適用要件や流れについて解説
2024.12.15
生前贈与で取得した不動産も3000万控除の適用要件を満たせば、控除が利用できます。主な適用要件は居住用として利用していることや、売主と買主が生計を共にしていないことです。
また、要件を満たしていても、2年以内に同様の控除を利用している場合は利用できません。
この記事では、生前贈与した不動産で3000万控除を利用する場合の適用要件や注意点、控除を受ける際の流れなどを解説します。
目次
- 1 生前贈与した不動産も3000万控除が利用できる?
- 2 生前贈与した不動産を3000万控除する場合の適用要件
- 3 居住用として利用している
- 4 売主と買主が生計を共にする関係ではない
- 5 生前贈与の不動産を3000万控除する場合の注意点
- 6 空き家の場合は適用できない
- 7 入居してすぐに売却しない
- 8 前年や前々年に居住用不動産の特例を受けた場合は適用できない
- 9 生前贈与の不動産を3000万控除する場合に必要な書類
- 10 生前贈与の不動産を3000万控除する場合の流れ
- 11 要件を満たすか確認する
- 12 確定申告をする
- 13 生前贈与しなくても利用できる不動産の控除・特例
- 14 相続空き家の3000万控除
- 15 小規模宅地等の特例
- 16 生前贈与された不動産が3000万控除適用か確認しよう
生前贈与した不動産も3000万控除が利用できる?
生前贈された不動産を売却する際、適用要件を満たしていれば居住用不動産の3000万控除が利用できます。
そもそも居住用不動産の3000万控除とは、住んでいた家を売却した際に出る利益の3000万円まで非課税にできる制度です。そのため、利益に対する譲渡所得税を大幅に抑えられます。
本来、不動産を無償で譲る生前贈与の場合、利益は発生しないため3000万控除は利用できません。
しかし、生前贈与された不動産を売却する際には、要件を満たしている場合のみ、3000万控除が利用できます。
生前贈与した不動産を3000万控除する場合の適用要件
生前贈与された不動産を売却する際に3000万控除を利用するには、以下の要件に適用している必要があります。
・居住用として利用している
・売主と買主が生計を共にする関係ではない
それぞれどんな内容なのか、確認していきましょう。
居住用として利用している
生前贈与した不動産を売却する際に3000万控除を受けるには、生前贈与された人が居住用として利用している、あるいは今後居住用として利用する予定があることが条件になります。
現在住んでいない場合は、住まなくなってから3年が経過した日を含む年の12月31日まで売却することも要件のひとつです。
また、生前贈与された不動産にこれから住もうと考えている場合は、いくつか注意点があります。注意点に関しては、後ほど詳しく説明します。
売主と買主が生計を共にする関係ではない
売主と買主が親子や夫婦、生計を一にする親族など特殊な関係ではないことも要件にあります。
内縁関係にある人や、特殊な関係性を持つ法人なども含まれます。
生前贈与の不動産を3000万控除する場合の注意点
生前贈与で取得した不動産を3000万控除する場合、以下の3つに注意する必要があります。
・空き家の場合は適用できない
・入居してすぐに売却しない
・2年以内に居住用不動産の特例を受けた場合適用できない
それぞれの注意点について、詳しく解説していきます。
空き家の場合は適用できない
3000万控除を受けるには、生前贈与で取得した不動産を自宅として利用していることが条件になるため、空き家の場合は適用できません。
また、別荘や一時的に居住している場合も自宅として認められず適用外になります。自宅として認められるかどうかは、税務署による総合的な判断で決まります。
住民票を置いていなかったり、ライフラインの使用が極端に少なかったりする場合は、住んでいると認められるには難しいかもしれません。
自宅と認められるには、年間の多くをその家で過ごす必要があると考えられるでしょう。
入居してすぐに売却しない
先述した通り、生前贈与で取得した家に入居してすぐに売却しても3000万控除は適用されないので注意が必要です。
3000万の控除を適用するために一時的に入居しただけでは利用が認められません。
期間に明確な規定があるわけではありませんが、贈与された不動産に一時的に住むだけでは3000万控除は受けられないと認識しておきましょう。
前年や前々年に居住用不動産の特例を受けた場合は適用できない
前年や前々年に居住用不動産の3000万円の特例を受けた場合は、控除対象外になります。
生前贈与された不動産で3000万控除を受けるには、売却時期を見直すのがポイントです。
3000万控除は3年に一度の利用が可能なため、前回特例を受けた時期から考えて売却時期を検討してみましょう。
生前贈与の不動産を3000万控除する場合に必要な書類
生前贈与の不動産を売却する際に3000万控除を受けるには、以下の書類が必要になります。
・確定申告書
・譲渡所得の内訳書(土地・建物用)
・戸籍の附票
・売却した家とその敷地の全部事項証明書(登記簿謄本)
・自宅を売却した際の書類の写し
・自宅を購入した際の書類の写し
・住民票の写し、あるいはマイナンバー
確定申告書と譲渡所得の内訳書は税務署の窓口で取得するか、国税庁のホームページからダウンロードできます。戸籍の附票は市区町村の自治体窓口、登記簿謄本は法務省で取得可能です。
自宅を売却・購入した際の書類の写しや住民票の写し、マイナンバーなどは自宅で保管しているケースがほとんどです。必要書類は事前に確認しておくことをおすすめします。
生前贈与の不動産を3000万控除する場合の流れ
生前贈与の不動産で3000万控除を利用する流れとして、要件を満たしているか確認したあと、確定申告が必須となります。
ここでは、生前贈与された不動産を売却する際に3000万控除を利用する流れを確認していきましょう。
要件を満たすか確認する
まずは、生前贈与された不動産が控除を受けられる適用要件を満たしているのか確認することが大切です。
現在、生前贈与した家に長く住んでいれば問題ありませんが、住んでいない場合は3年前まで住んでいたかどうかで、適用できるかが決まります。
また、別荘として使用している場合や一時的にしか住んでいない場合は、適用外となる可能性が高いでしょう。
加えて、2年以内に3000万控除を使っていないかどうかも確認が必要です。これらの要件を満たしていれば不動産売却する準備に入ります。
条件を満たしていなければ、売却を見送り時期をずらすか、控除を断念せざるを得ないでしょう。
確定申告をする
要件を満たしていても確定申告をしなければ3000万控除は受けられないため、必ず確定申告をしましょう。
確定申告の時期は、不動産を売却した年の翌年2月16日〜3月15日までの期間です。確定申告では確定申告書のほかに、譲渡所得の内訳書も提出しなければなりません。
また、3000万の控除が適用され所得税がかからない場合や、控除を利用しない場合でも自宅を売却した際には確定申告する必要があります。
生前贈与しなくても利用できる不動産の控除・特例
生前贈与しなくても利用できる不動産の控除や特例があります。
ここでは「相続空き家の3000万控除」と「小規模宅地等の特例」の制度について、控除の内容や適用要件を確認していきましょう。
相続空き家の3000万控除
相続空き家の3000万控除とは、相続した空き家を売却するときに3000万控除できる制度です。控除を利用するにはいくつかの要件を満たす必要があります。
以下は適用要件の一部です。
・相続開始直前まで被相続人が住んでいた家であること
・相続開始直前まで被相続人以外は住んでいなかったこと
・1981年(昭和56年)5月31日以前に建てられた戸建てであること
・区分所有建物登記がされていない建物であること
・売却価格が1億円以下であること
・親、子、夫婦など特別な関係の人への売却ではないこと
上記以外にも細かく要件が設定されています。詳しくは国税庁のホームページでご確認ください。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、土地を相続したときに一定の面積まで、相続税の評価額を50%または80%減額できる制度のことです。
相続する土地の評価額が低くなるため、相続税を抑えられます。小規模宅地等の特例を受けるには、相続する土地の利用方法や相続した人の立場などが条件に当てはまる必要があります。
詳細に決められた条件をすべて把握するには困難なため、税理士に相談するのがベストです。
生前贈与された不動産が3000万控除適用か確認しよう
生前贈与された不動産も、要件を満たしていれば売却の際に3000万控除を適用できます。居住用として利用しているか、また住んでいない場合は3年前まで住んでいたかなども要件に含まれます。
さらに、売主と買主が生計を共にする関係でないことも重要です。要件を満たしている場合は、必要書類を提出し、確定申告も忘れてはなりません。
居住用不動産の3000万控除は生前贈与と相続、どちらも要件を満たしていれば適用可能です。減税にはどちらがお得か見極めるためにも、ぜひ一度専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。