相続税の節税対策10選|ポイントと注意点を押さえて財産を守ろう
2024.12.15
財産を持つ親や配偶者、親族などが亡くなり相続をすると、相続税が発生します。相続税は適切な対策を行うことで軽減が見込めるため、正しい方法を知っておきましょう。また、相続税対策は生前からしておくことが大切です。今すぐできることから始めたい相続税の節税対策を10選紹介します。
目次
- 1 相続税対策の前に知っておきたい相続税の仕組み
- 2 相続税の基礎控除
- 3 相続税を軽減する2つのポイント
- 4 今から始める相続税対策10選
- 5 対策1.毎年110万円ずつ子や孫に生前贈与を行う
- 6 対策2.相続時精算課税制度を活用して生前贈与を行う
- 7 対策3.結婚、子育て資金の一括贈与を行う
- 8 対策4.教育資金を贈与する
- 9 対策5.生命保険に加入し非課税限度額を活用する
- 10 対策6.配偶者控除の特例を活用する
- 11 対策7.小規模宅地等の特例を活用する
- 12 対策8.金融資産で不動産を取得する
- 13 対策9.生前に墓地や仏具などを購入する
- 14 対策10.養子縁組を行って基礎控除額を増やす
- 15 相続税対策で注意しておきたいポイント
- 16 相続税対策は専門家に相談しながら生前から行おう
相続税対策の前に知っておきたい相続税の仕組み
相続税対策を行うには、相続税の基本的な考え方を知っておく必要があります。相続税の基礎控除についておさらいし、相続税軽減のポイントを理解しましょう。
相続税の基礎控除
相続税には、基礎控除があります。親や配偶者、親族などが亡くなって財産を相続する場合、不動産や預貯金を含む全ての遺産の合計が基礎控除額を超えると、相続税が課税されます。
<相続税の基本の計算式>
【基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数】
例えば、夫と妻、子2人の世帯で夫が亡くなった場合、法定相続人は妻と子2人です。上の式に当てはめて計算してみましょう。
3,000万円+600万円×3人=4,800万円
遺産総額が4,800万円を超えなければ、相続税はかかりません。もし遺産総額が4,800万円を超える場合は、超過分が課税対象となります。
相続税を軽減する2つのポイント
相続税の金額は相続財産の評価額に応じて決まるため、相続財産を減らしたり評価額を下げたりすると節税対策になります。それ以外にも、軽減制度の活用も有効です。
相続財産を減らす・評価額を下げる
生前に相続財産を整理して少なくする対策をしておけば、課税対象額を抑えて相続税を軽減できます。相続財産を減らすためには生前贈与をする方法や、預貯金などの評価額の高い資産から賃貸用不動産などの相対的に評価額が下がりやすい資産に組み替える方法などがあります。
相続財産の種類によっては非課税枠が設けられているものもあるため、活用して相続財産を減らす方法を検討しても良いでしょう。
相続税軽減制度を活用する
相続財産を減らさずに、控除や特例制度を活用して課税額を減らす方法もあります。配偶者控除や小規模宅地等の特例などは、相続人の税負担が重くなりすぎないよう設けられた相続税法の制度です。適切に制度を活用すれば、相続税の負担を減らせます。
今から始める相続税対策10選
いざという時のために、相続税対策は生前から行っておきたいものです。今から始められる相続税対策を紹介します。
対策1.毎年110万円ずつ子や孫に生前贈与を行う
暦年贈与を活用して、生前贈与を行う方法があります。暦年贈与は、相続税対策として一般的な方法です。贈与税には、受贈者1人あたりの基礎控除として年間110万円の非課税枠があります。贈与税の基礎控除は、贈与者ではなく受贈者ごとに設定されるルールです。
例えば、5人の相続人に1年に110万円ずつ贈与すれば年間550万円の相続財産を圧縮できます。反対に、母から100万、父から100万の贈与を1人に行うと合計200万円となり、110万円を超えるため課税対象になります。
なお、毎年継続して同額の贈与を繰り返していると定期金給付契約とみなされて、贈与税がかかるかもしれません。
加えて、被相続人の死亡7年以内に行われた暦年贈与は相続税の課税対象になる点にも注意が必要です。(2024年(令和6年)1月1日以降の相続に適用。それ以前は死亡3年以内)
対策2.相続時精算課税制度を活用して生前贈与を行う
相続時精算課税制度とは、相続が発生するまで贈与税の納付を待ってもらえる制度です。60歳以上の親や祖父母から18歳以上の子と孫に対しての贈与で、一度に多くの財産を贈与したい場合に有効です。
相続の時に相続時精算課税を使って贈与した財産は、相続開始時に相続財産の中に戻して計算されます。この制度を利用すると2,500万円までは贈与税が非課税になり、2,500万円超の部分は一律20%課税されます。
対策3.結婚、子育て資金の一括贈与を行う
18歳以上50歳未満の子に対して、直系尊属である父母や祖父母が結婚・子育て資金に充てるために1,000万円までの金額を贈与した場合は、贈与税は非課税になります。
この制度は令和7年3月31日までの間に行われた贈与について適用されます。贈与契約を結んだ上で金融機関の専用口座に預金されるのが条件です。受贈者が50歳になる前に贈与者が死亡した場合は、残額全てが相続税の対象になります。
対策4.教育資金を贈与する
30歳未満の子や孫に対して、親や祖父母から教育資金として贈与した場合、受贈者1人につき1,500万円までを非課税で贈与できる制度です。
親や祖父母が金融機関と資金の管理契約を締結し、子や孫名義の口座に一括で入金します。受贈者が30歳になった時に教育資金口座に残額があれば、贈与税の対象となります。この制度は、令和8年3月31日までの適用です。
対策5.生命保険に加入し非課税限度額を活用する
相続人が受け取る生命保険金は相続税の課税対象ですが、基礎控除額とは別に500万円×法定相続人の数の非課税枠があります。
妻と子2人が法定相続人の場合、死亡保険金が1,500万円(500万円×3人)までは相続税は非課税です。生命保険に加入すると、相続税の節税が期待できるでしょう。相続人以外の人が保険金を取得した場合は、非課税の適用はありません。
対策6.配偶者控除の特例を活用する
配偶者控除の特例を利用すれば、正味の遺産額のうち1億6,000万円または配偶者の法定相続分相当額のどちらか多い金額まで相続税は加算されません。
遺言書等によって法定相続分より多い金額の財産を相続する場合も、1億6,000万円までは相続税はかからない決まりです。また、どんなに多額の財産であっても法定相続分の範囲内であれば非課税となります。
ただし配偶者が亡くなった時に残した財産を子が相続すると、相続税が発生するため二次相続の問題が発生することになります。
対策7.小規模宅地等の特例を活用する
小規模宅地等の特例とは、被相続人が住んでいた土地を相続する場合、330㎡を限度に土地の相続税評価額を80%減額できる特例です。
特例は、被相続人の配偶者や同居親族などが適用対象になります。土地は相続税評価額が高いため、最大80%減額できると高い節税効果が得られます。
対策8.金融資産で不動産を取得する
不動産の相続税評価額は不動産の時価よりも低く評価されるため、現金など金融資産として持っておくより不動産を取得した方が相続税は少なくなる傾向です。
賃貸不動産であれば居住用の宅地・建物の評価側から賃貸部分を控除できるため、さらに相続財産を圧縮することが可能になります。さらに家賃収入も見込める点はメリットです。
一定条件を満たせば小規模宅地等の特例も併用可能で、200㎡を限度に評価額が50%減額されます。
対策9.生前に墓地や仏具などを購入する
墓地や仏具などの祭祀財産は非課税財産と定められています。相続発生後に必要となる祭祀に関するものを相続前に購入しておくと、課税対象になりません。ただし純金の仏像など、相続後に売却するケースなどは課税対象となります。
対策10.養子縁組を行って基礎控除額を増やす
養子縁組を行って血縁関係のない人と法律上の親子関係になると、法定相続人が増えるため基礎控除額や死亡保険金の非課税枠を拡大できます。
養子縁組の種類は、普通養子縁組と特別養子縁組の2種類。実親との法律上の親子関係が継続する普通養子縁組の場合、法定相続人に含められる養子の数には制限があります。被相続人に実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人です。
実親と法律上の親子関係が消滅する特別養子縁組の場合は、法定相続人として算入できる数に制限はありません。
相続税対策で注意しておきたいポイント
相続税をできるだけ減らしたいからといって、過度な相続税対策は否認されるリスクがある点に注意しておきましょう。
国税庁の相続税法財産評価基本通達には、
この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。
と規定があります。
参照:国税庁法令解釈通達
過去に最高裁判例で相続税評価額が認められなかった事例もあるため、相続分野に詳しい弁護士・税理士・行政書士などと相談しながら考えることをおすすめします。
住栄都市サービスでは、不動産のプロと相続特化の提携士業(弁護士・税理士・行政書士)が無料相談を受付ています。まずはお気軽にご相談ください。
相続税対策は専門家に相談しながら生前から行おう
相続税対策には、相続財産を減らす方法と特例を活用する方法があり、適切に対策を行えば相続税を大幅に軽減して大切な資産を守れます。
ただし相続には相続財産の調査や遺言書の確認、税金の申告や支払いなど膨大な手続きが発生します。相続人だけでは手続きや判断が難しいため、相続税対策が必要な人は専門家に一度相談してみてはいかがでしょうか。
監修
佐々木総合法律事務所/弁護士
佐々木 秀一
弁護士
1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。