相続不動産

JOURNAL

相続ジャーナル

お客様のお役に立つ情報を随時配信しています

遺産分割協議書とは?必要なケースや作成の流れ、注意点など

2024.12.15

法定相続人全員で遺産分割協議を行った際は、遺産分割協議書の作成が必要です。作成することで、相続人同士のトラブルを防いだり、各種手続きに使用できたりします。

しかし、遺産分割協議書は何度も作成するものではないので、どうすべきか分からない人も多いはず。本記事では、遺産分割協議書が必要なケースと作成までの流れ、注意点などを解説します。

遺産分割協議書とは?

遺産分割協議書とは、法定相続人全員で行う遺産分割協議の結果をまとめた書類です。どこかでもらえるわけではなく、基本的には自分で作成し、法定相続人全員が1通ずつ保管します。

なお、遺産分割協議を行ったとしても、遺産分割協議書の作成は必須ではありません。しかし、作成しておくと相続人の間でのトラブル防止につながるだけでなく、相続財産である土地・建物や株式等の名義変更や相続税の申告時に必要書類として使えます。

遺産分割協議書が必要なケース

遺産分割協議書は、次のケースでは作成不要です。

1. 法定相続人が1名だけの場合
2. 遺言書の内容通りに遺産分割する場合
3. 法定相続分の割合に従って遺産分割する場合

それ以外のケースにおける遺産分割協議書の必要性は、遺言書の有無によって異なります。どんなケースで必要になるのか見ていきましょう。

遺言書あり+内容と異なる遺産分割をする

被相続人が遺言書を残していた場合は、原則としてその内容通りに遺産相続を行うため、遺産分割協議書の作成は不要です。

ただし、遺言書の内容に不備がある、または記載されている内容とは異なる遺産分割をすることを相続人が合意した場合には、法定相続人全員で遺産分割協議を行い、その結果を遺産分割協議書にまとめる必要があります。

遺言書なし+法定相続割合で遺産分割しない

法定相続人が複数いて、被相続人が遺言書を残していない場合は、遺産分割協議を行います。協議の結果、法定相続分の割合以外で相続することが決まった場合には、全員が合意した内容を遺産分割協議書にまとめます。

なお、法律で定められた法定相続分の割合通りに相続するのであれば、遺産分割協議書の作成は不要です。

遺言書による不動産登記について、詳しくは以下の記事をご覧ください。

遺言書による不動産の相続登記について。必要書類と流れをわかりやすく解説

遺産分割協議書が必要な3つの理由

遺産分割協議書が必要な理由は、主に次の3点です。

1. 相続のトラブル防止
2. 相続財産の名義変更
3. 相続税の申告

本当に必要なのかどうか、それぞれ詳しく見ていきましょう。

1. 相続のトラブル防止

遺産分割協議は法定相続人全員が合意すれば口頭でも成立します。しかし、協議が終わってから「気が変わった」「別の遺産がほしい」などと言い出す人が出てくる可能性はゼロではありません。

そのような状況では相続の手続きを進められない上に、相続人間のトラブルに発展する恐れもあるでしょう。

その点、遺産分割協議書があれば法定相続人全員が協議内容に納得した証明になります。さらに遺産分割協議書は法的な効力を持ちます。法定相続人は記載された内容を守る義務があるため、相続にまつわるトラブルの防止につながるというわけです。

2. 相続財産の名義変更

被相続人が所有していた以下の財産の名義を変更する際に、遺産分割協議書が必要になるケースがあります。

遺産分割協議書が必要な手続き 提出先
不動産 法務局
預金口座 金融機関
株式 証券会社
自動車 運輸支局・軽自動車検査協会

法定相続人が複数いる場合は、遺産分割協議書を作成しておいた方が手続きの面でもスムーズに進むでしょう。

3. 相続税の申告

遺言書がなく被相続人同士で遺産分割協議を行った結果、「法定相続割合で遺産分割をしない」と決まったケースでは、相続税の申告時に遺産分割協議書の提出が必要になる場合があります。

なお相続税が発生するのは、相続したプラスの財産からマイナスの財産や葬式費用などを引いた後の額が、基礎控除額(=3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えた場合のみです。

相続税の申告は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヵ月以内と決まっています。申告期限に間に合うよう、遺産分割協議書は余裕を持って作成しましょう。

不動産の相続税について、詳しくは以下の記事で解説しています。

不動産の相続税はいくら?計算方法と使える控除・特例について解説

遺産分割協議書作成までの流れ・注意点

遺産分割協議書は次の4ステップを踏んで作成するのが基本です。

1. 遺言書の有無を確認する
2. 相続人と相続財産を調査、確定する
3. 相続人全員で遺産分割協議を行う
4. 遺産分割協議書を作成する

主な流れと注意点を解説します。

1. 遺言書の有無を確認する

遺産分割協議の実施、そして遺産分割協議書の作成が必要かどうか判断するために、まずは遺言書の有無を確認します。

<注意点>
遺産分割協議を行った後に遺言書が出てきた場合は、協議がやり直しになります。遺言書の存在を見落とさないように、被相続人の自宅にないか、親族が預かっていないか、公証役場に保管されていないか、しっかり確認しておきましょう。

2. 相続人と相続財産を調査、確定する

先述したように、遺言書がなく法定相続割合で遺産分割をしない場合は、遺産分割協議を行います。協議は法定相続人全員で行う必要があるため、被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍を取り寄せ、明らかになっていない相続人がいないか確認します。

法定相続人が確定したら、次に行うのは相続財産の調査です。相続財産には「プラスの財産」「マイナスの財産」「非課税財産」の3種類があり、これらを基に遺産総額を算出します。

プラスの財産 マイナスの財産 非課税財産
・現金
・預貯金
・不動産
・株式
・みなし相続財産
(死亡保険金、死亡退職金)など
・借金
・未払金
・買掛金など
・葬儀費用
・仏具
・墓石の購入費用など

多額の借金や未払金がある場合など、プラスの財産よりもマイナスの財産の方が多い場合は、相続放棄を検討することもあるでしょう。

<注意点>
遺産分割協議後に新たな相続人や相続財産が見つかると、協議はやり直しになります。相続をスムーズに進めるためにも調査は慎重に行いましょう。

3. 相続人全員で遺産分割協議を行う

法定相続人と相続財産が確定したら、相続人全員で遺産分割協議を行います。全員が集まるのが難しい場合は、オンラインや電話、郵送でのやり取りでも問題ありません。

協議の場では、被相続人(亡くなった人)の相続財産を「誰が・どの財産を・どの割合で」相続するか話し合います。

<注意点>
遺産分割協議の成立には、法定相続人全員の合意が必要です。全員が納得する内容にまとめられない場合は、弁護士に仲介を依頼する、家庭裁判所で遺産分割調停をする、といった方法があります。

不動産の相続放棄はできる?手続き後の管理責任や注意点を解説

4. 遺産分割協議書を作成する

協議の成立後は遺産分割協議書を相続人の人数分だけ作成し、書面には全員が署名し、実印を押印して行います。作成が完了したら、相続にまつわる各種手続きに備えて、全員分の印鑑証明書とともに各々が保管します。

<注意点>
書面に不備があると遺産分割協議書は作り直しになるので、作成は慎重に進めましょう。

また、遺産分割協議で自身の相続分を放棄することと、家庭裁判所に申し立てる相続放棄は別物です。借金の相続をしたくない場合は、家庭裁判所に相続放棄の手続きが必要です。相続放棄をしたときは、初めから相続人ではないことになります。

遺産分割協議書の作成方法・ひな形

遺産分割協議書の作成方法に法的な決まりはありませんが、記載内容に不備があると作り直しが必要になるので注意が必要です。作成方法とひな形について紹介します。

遺産分割協議書に記載する内容・必要書類

遺産分割協議書には、以下の事項を記載します。

1. 被相続人の氏名、死亡日、最後の住所地
2. 相続人全員が遺産分割協議の内容に合意したことを示す文言
3. 各相続人が受け継ぐ財産の内容
4. 相続人全員の氏名、住所、実印による押印
※参照:国税庁「遺産分割協議書の記載例」

また、遺産分割協議書には、作成日より前に発行された印鑑証明書を添付します。

作成は手書き・パソコンどちらでも可

遺産分割協議書の様式に決まりはないので、手書きとパソコンのどちらで作成しても構いません。パソコンで作成した場合でも、すべての書面に法定相続人全員が署名し実印を押印する必要があります。

作成時はひな形を利用すると便利

遺産分割協議書の作成に悩んだときは、サンプルを参考にするのも一案です。パソコンで作成する場合は、インターネット上で公開されているひな形(テンプレート)のダウンロードがおすすめ。

以下の画像は法務局が公開しているひな形です。

※画像引用元:法務省民事局「登記申請手続のご案内(相続登記①/遺産分割協議編)」

遺産分割協議書の作成や不動産相続は専門家に相談を

遺産分割協議書は遺産分割協議の成立後に作成する書類で、法的な効力を持ちます。内容に不備があると作り直しが必要になるので、書き方に関しては司法書士、相続に関しては税理士、不動産に関しては不動産会社と、それぞれの専門家に相談すると確実です。

不動産会社の住栄都市サービスは、弁護士・税理士・行政書士といった相続特化の士業と提携しています。不動産を含む相続が発生した際は、ぜひ当社までご相談ください。相続と不動産にまつわるお悩みをヒアリングし、お客様にとってベストな選択肢をご提案します。

不動産や相続にまつわるお悩みはお任せ!相談は完全無料の住栄都市サービス

監修

佐々木総合法律事務所/弁護士

佐々木 秀一

弁護士

1973年法政大学法学部法律学科卒業後、1977年に司法試験合格。1980年に最高裁判所司法研修所を終了後、弁護士登録をする。不動産取引法等の契約法や、交通事故等の損害賠償法を中心に活動。「契約書式実務全書」を始めとする、著書も多数出版。現在は「ステップ バイ ステップ」のポリシーのもと、依頼案件を誠実に対応し、依頼者の利益を守っている。

TOP